9話.はぁ、壁の花になっとくしか……その前にライラ趣味悪すぎな?
お兄様初登場ならぬ初会話(?)です!
「ライラお嬢様……」
「わかってるから、言わないでミラ。私の趣味が悪すぎたってことは」
パーティー当日、私は鏡とにらめっこしていた。その様子を、この数日間でけっこう打ち解けてきたミラが困ったように見つめている。
その鏡に映っているのは、赤い色の、それ自体はとても品のあるミラとお父様、お母様が選んだらしいドレスの上に、1か月前のライラが選んだらしい、生地こそはいいものだがデザインが全体的にアレな、ピンクのゴスロリ的なアクセサリーの数々を身にまとった、私、ライラ・メルヴィルの姿。
……いや、深紅のドレスにピンクのゴスロリって、どんな趣味してんのよ?
今より少し前、ちょうどパーティーに行く1時間くらい前になって、ミラが深紅のドレスとピンク色のひらひらふりふりのレースとフリルがついたカチューシャ、明らかに高い、けれど趣味の悪い大きな宝石がたくさんついたネックレスとブレスレット、ハートの形をしたイヤリングを持ってきた時さすがに私も吹いた。
……ライラってこんなに趣味悪かったの?え、いやどうしよ、壁の花以前に、こんなので行ったら別の意味で目立って仕方ないし、いじめの罪以前に、公爵家の恥だよ?
「ライラ、まだ決まらないのか」
そんなこんなで、私とミラが途方に暮れていると(ミラがどうかは知らないけど)、もう支度を終えたアイラがノックをして部屋に入ってきた。相変わらず私のことが嫌そうな顔をしている。
「お兄様」
「相変わらずひどい趣味してるな。平民の女でもこんな服選ばないぞ。……まぁ、こうなると思っていたが」
アイラは私のドレス姿をざっと見ると、苦虫を嚙み潰したような顔でそう言った。失礼だけれど、本当のことなので反論できない。
「はぁ。おい、ジョンソン、あれを持ってこい」
「はっ。かしこまりました、アイラ様」
アイラは自分の執事・ジョンソンにそう命じた。瞬く間に執事が戻ってきて、アイラに何かを手渡した。
「メルヴィル公爵家の恥になるから、仕方なく用意していただけだ。勘違いするな」
「はぁ……」
アイラはそう言うと、ミラにその何かを手渡して、私の部屋を出て行った。
……はぁ、急に来たからびっくりしたぁ~。それにしても、何だったんだろう?メルヴィル公爵家の恥になるから、って言ってたけど、この状況を解決出来るほどの何かなのかな?
「ライラお嬢様、これを。アイラ様からいただいたものです」
そう言ってミラが差し出したのは、真珠のあしらわれた品のあるアクセサリーだった。赤いドレスと、絶対に似合うと私にも断言できる。
……え、ちょっと待って、これ絶対高級品だよね?どっから湧いてきた?お兄様から?え、お兄様前もって準備してくれてたの?公爵家の顔に泥を塗ることになるから、嫌いな妹のために?え、ありがとう。めちゃくちゃ助かりました。普通にセンスいいし。モテるのも納得だわ。……はぁ、本当に助かった。
「ライラお嬢様、早く付けてパーティーに行きましょう。アドラー様が迎えに来てしまいますよ」
「わかったわ。お兄様に、ありがとうと伝えておいてちょうだい」
……そうだ、アドラー様も来るんだった、本当に良かった。まぁ、最悪飾りなしって手もあったんだけど、それは公爵令嬢として、ちょっとね……。アクセサリーを揃える金もないのかって言われちゃう。
真珠のアクセサリーをつけた私は、息を呑むほど美しかった。
あ、ナルシストじゃなくて、本当に、そうなの。ライラってやっぱ、美人だからさぁ。けどよく考えたらこれ、この見た目で、しかもアドラー様にエスコートされるんだから、目立たないわけないよね?本当にどうしよ?
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