番外編.アドラー視点 ライラとの関係(4)
ヒロインちゃんとアドラーの会話が意図せぬ形で弾みます……!
そして今、俺はなぜか、その男爵令嬢とライラの素晴らしさについて議論していた。
事の発端は数分前。
ライラが伝説の桜の木を見に行きたいと言い、男爵令嬢、マリー・スコットの姿を見つけた途端、急に俺を男爵令嬢に押し付けるようにして去っていったのだ。いや、去っていったというか……物陰に隠れて、こちらの様子を伺っている。これで隠れているつもりだとしたらライラはちょっと……いや、だいぶかくれんぼが下手だと言えるだろう。
さっきからライラの横を通りすぎる生徒が、ちらちらとライラに視線を送っているが、ライラはそれに全く気づいていない。
そして、男爵令嬢は俺に向き合うと、挑むような目で見つめてきて、こう言ったのだ。
「……わ、わたし、王太子殿下には負けませんからねっ!?」
と。
いや、意味がわからない。
そう言った後も次々とライラの素晴らしさを述べていく男爵令嬢、マリー・スコット。
俺はその熱弁に半ば巻き込まれるようにして相槌を打っていた。
彼女の言い方はさすがに盛りすぎだが、言っていることに間違いはなく、むしろ共感できる点しかない。
「……そうか。よく分かった。非常に共感できる点ばかりだ」
「そうですか!?じゃあ、明日も話しましょう!ライラ様の素晴らしさについて!…………………………って、はっ!?わたしは何を!?申し訳ございません王太子殿下、このような無礼な行いを!」
男爵令嬢は急に我に返った。確かに、さっきの行いは無礼以外の何物でもないだろう。
だが、俺は自分の気持ちをわかってくれている人がいるのがわかって嬉しくて、つい男爵令嬢の誘いに乗ってしまった。この関係が、他人からどう映るかも考えずに。
「わかった。明日だな?またここで、待ち合わせしよう」
こうして、ヒロインとメインキャラの「悪役令嬢について語り合う」という奇妙な関係は、始まったのだ。
……そう言えば、俺と男爵令嬢の会話を聞いてライラはめちゃくちゃ嬉しそうにしていたな。どういうことだ?
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