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#97:渡会へのご褒美

※優君と瑠璃ちゃん(渡会)は付き合っていません。

「それでは、皆さんお疲れ様です!」


 中間テストが終わったこともあり、俺たちは美姫の家に集まってプチお疲れ様会みたいなものを開くことになった。


「はぁ、とりあえず高校最初のテストから赤点がなくてよかったです」

「貴方ね……その調子で三年間大丈夫なのかしら?」


 赤点を取らずに安堵している小泉を、少し呆れたような目で渡会が見ていた。


「そうですねぇ……二年間は何とかなるかもしれませんが、最後の一年は厳しいかもしれませんね」

「そっかそっかー。じゃあ、最後の一年にも似たような特典つけてあげるね?」

「いや、辞めてください。赤点は取りませんから!」


 姉さんが何やら不気味な笑顔で小泉に何かを話すと、小泉は顔っを真っ青に染めてがくがく震えだした。小泉を助ける義理はないけど、余りにかわいそうなので少しくぎを刺しておくことにするか。


「……姉さん?」

「うん、どうかした優君?」

「何の話してるか分からないけど、それくらいにしておきなさい」

「優君がそういうなら今はそういうことにしておくよ」


 やれやれ。そう思っていると、目の前にいた小泉が目を輝かして俺のことを見ていた。


「先輩。今のちょっとカッコよかったですよ?」

「お、おう……そうか?」

「はい。いつもと違ってカッコよかったですよ!」


 どうやらいつもはかっこいいと思ってないらしい。ワザといってんのか、ポロっと口から出てしまったのかは分からないが、そう思っているとだけ受け取っておこう。うん?今更慌てたように口を押えても遅いぞ!そう思っているということだけは頭に入れておこう。


「何か絶対先輩に勘違いされているような気がします」

「あはは。茜ちゃん、ファイトだよ!もっと自分の気持ちに素直にならないと」

「……それが出来たら苦労はしてませんよ」


 天音と小泉が何かコソコソと話している。


「そういえば月田君」

「どうかしたのか?」

「その……美姫さんと天音さんには負けちゃったのだけれど、その頑張ったしご褒美を要求するわ」

「ご褒美?」


 何を要求されるのかと思い、美姫と目を合わせると彼女はクスっと笑った。


「いいんじゃないですか?後で私も優也君にご褒美貰いますね。あ、勿論優也君にもご褒美を上げます」


 美姫からご褒美がもらえるらしい。滅茶苦茶楽しみだなぁ。そう思っていると、目の前にいる渡会がジト目で俺のことを見てきた。


「ああ、悪い。それで俺は何をすればいいんだ?」

「えっと……そうね?その……膝枕してくれないかしら?」




 俺は今、美姫の部屋で正座をしていた。そして、膝の上には渡会の頭があった。彼女はじっと俺の方を見つめたと思ったら、目線を逸らしての繰り返しだ。


「これ……俺に膝枕させて何がいいんだ?」

「まだ優也君には分からないと思いますよ。それよりも彼女の頭をなでて差し上げてはどうでしょうか?」


 美姫は俺にそんな提案をしてくる。いやいやいや、彼女でも幼馴染でもない渡会に対してそんなことをするのはさすがに気が引ける。第一渡会がそんなの許すわけないだろう。そう思っていたのだが、渡会はそっと俺の服の裾を軽く引っ張った。


「月田君。お願い。ご褒美に私の頭をなでてほしいわ」


そして彼女が普段出すこともない、甘えるような声を出して言った。俺は滅茶苦茶驚いたが、渡会は本当にしてほしそうな雰囲気を醸し出していた。これで、触るなと言われ、手をはたかれたらどうしようとかも考えた。しかし、俺の膝の上にいる彼女の可愛らしい表情と甘えるような声に負けて俺は彼女の頭を優しくなでた。


 すると彼女の表情はとろけるような物へと変化した。いつもは絶対に見せないであろう表情を目の当たりにすることになり、ドキドキさせられた。


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