#8:フードコート
フードコートでのお話です。
美姫ちゃんの家には、優秀な人たちがいるみたいですね。
服屋での買い物が終わった後、何故か俺と小泉の二人で手をつないでいた。何でも美姫が、天音に相談したいことがあるからしばらく二人で後ろで話してるとのことだった。
ということで俺たちの行きたいところに行っていいとは言われたんだけど、何故君は俺と手をつないでいるんだろうか。
「なぁ、小泉」
「何ですか、先輩?」
「お前こんなところでいつもみたいに冤罪で叫んだりはしないよな」
いつも自分から纏わりついてきて、しまいには変態呼ばわりするからな。周りに人がいない所でならまだ許せるが、こんな所でやられたら堪ったもんではない。
「何言ってるんですか先輩。こんなところで、叫んだら大変なことになっちゃいますよ?それに先輩との楽しい時間を奪われるなんて……嫌ですからね」
「小泉、お前どうした?」
「ど、どうもしてませんよ!?」
いつも小悪魔に体を押し付けようとしてくるこいつが、滅茶苦茶恥ずかしそうにそんなことを言うからつい別人なんじゃないかと思ってしまった。
俺たちは、本屋に来ていた。買いたい本――ラノベがあったので、ここに来るとした。折角時間をもらったわけだし、本屋によっても構わないだろう。本屋で買い物している間も、小泉はずっと俺の手を握っていた。
「そろそろお昼の時間みたいですね。……折角なのでフードコートに行きませんか?」
「うん、それいいね!」
「いいんじゃないか?」
「私も賛成です」
美姫の提案に賛成し、俺たちはフードコートでお昼を取ることにした。俺は某有名なファーストフード店で買った。三人はその隣にいある麺屋で美姫はうどんを、天音と小泉はラーメンを注文していた。
「さてと、優也君」
俺がファーストフード店での注文を終え、商品を持って席に着くと美姫がそう言った。俺はどうしたのだろうかと彼女に視線を合わせる。
「ポテトで少しやってみたいことがあるんですけど」
「やってみたいこと?」
「は、はい。えっと、そのお互い食べさせあいたいなって……その、駄目ですか?
美姫はそう言うと目に涙を貯めてうるうるした表情をしながらそうお願いしてきた。そんな表情をした最愛の彼女の多のみを断れるわけもなく俺は黙って頷いた。
「美姫ちゃんがやるんだったら、私もやりたい」
「そ、そうです。美姫先輩だけずるいです!」
ちょ、ちょっと何を言ってるんだ君たち。俺はあくまで美姫に対して許可したわけで、二人には許可してないんだけど。
「ふふふ、先輩逃しませんよ。天音先輩、ポテト二つほど追加で買ってきて貰えませんか?」
「勿論だよ、ちょっと待ってね」
「いや、大丈夫ですよ。私の家の物に買いに行かせますので。早く食べないと麺が伸びてしまいますよ?」
「た、確かに。うん、分かったお任せするね」
「はい、お任せされました」
天音にお任せされた美姫はすぐに携帯を取り出すと、誰かに連絡を入れていた。
「とりあえず、優也君はポテト以外から食べてもらっていいですか?」
「え、ああまぁそりゃあ良いけど最後にポテト3つも食べるってことか?」
「勿論全部食べろとは言いません。お互いに食べさせあうつもりでしたので」
「それじゃあ、優也君。あーんです」
「あ、あーん」
俺は美姫にポテトをあーんしてもらっていた。
「ふふふ、お返しもお願いしますね」
「わ、分かった。はい、あーん」
俺があーんと言って彼女の口元にポテトを運ぶとやや恥ずかしそうにしていた。
「次は私の番だね」
「天音先輩のあとは私の番です」
三人によってローテーションが組まれ、美姫、天音、小泉の三人に一本ずつ食べさせられ、食べさせを繰り返させられた。サイズは一番小さいものだったおかげでそれほど長い時間はかからなかったけど、追加で頼んだ天音と小泉が持っているポテトが冷めるくらいの時間は経過していた。