#87:初めての料理
始めに言っておきます。普段は、天音ちゃんはこんなにいっぱい食べません。優君たちと同じか少し多い程度です。
なぜこんな話をしたのかは本編で。
「はい、皆さん完成しました」
「それじゃあ、配膳は俺たちでやろうか」
俺は天音の方を見てそう言った。彼女は嬉しそうに頷いた。
「うんうん。後は私たちの出番だよ。三人は座って待ってて!」
「それじゃあお言葉に甘えさせていただきます」
「私も席に座って待っておくよ」
「だ、大丈夫でしょうか」
美姫が少し困ったような表情を浮かべていた。
「流石によそるだけだから大丈夫だと思うよ。心配なら美姫ちゃん後ろで見ててあげれば?」
「そうですね。二人の後ろで見守ることにします」
そう言うと、美姫は俺たちに付き添うような形で一緒にリビングへと向かった。
「とりあえず、お皿はこれでよしっと。それじゃあ、天音は皿にご飯を入れてくれ」
「うん、分かった。任せといてね、優君」
天音にお皿を渡して指示を出す。その間に俺はカレーの入った鍋の前へと移動した。天音からご飯の乗ったお皿を受け取り、俺はそれに順番にカレーをかけていった。
カレーライスが盛りつけられた五つのお皿を全てトレーの上に乗せた後リビングまで運んだ。そして天音が、トレーからお皿を一つずつそれぞれの席の前に置いていく。
「ありがとうお兄ちゃん。天音お姉ちゃんもありがとうございます」
「二人ともお疲れさま」
先に席に座っていた、二人はそう言ってくれた。俺たちは二人に比べて作ることに関してそれほど貢献したわけでもないのでこれくらいは何てことはない。
「ほら、大丈夫だったでしょ美姫ちゃん?」
「ええ、大丈夫でした」
美姫は姉さんとそんな言葉を交わすと彼女の席に座った。彼女なりに心配してくれていたんだろう。まぁカレーをよそるだけなので、包丁を使ったりするわけではないからほぼ危険はないんだけど、そこは気にしたら負けなんだろう。
「それじゃ、いただきます」
「いただきまーす!……うん、凄く美味しいよ、優君」
天音は早速一口、カレーライスを口の中に放り込んだ。そして、飲み込むとそう言った。
「天音ちゃんも作るのを手伝ったから余計においしく感じるんじゃないですか?」
「きっとそうだね!」
「確かに初めての料理を作ったときは美味しかったなぁ」
「そうですね。私も作り始めの時は特に美味しく感じられましたし」
姉さんと千春は昔の自分を思い出すようにして言った。確かに初めて作った時とかは美味しく感じられるよな。あの時は母さんに教わりながら作ったけど、それでも特別においしかったのを覚えている。
「でもやっぱり皆で集まって食べるってのもまた美味しい理由の一つなんじゃないか?」
「確かにそうかもしれませんね」
「確かにそれはあるかもしれない。誰と食べるのかっていうのも結構関係してくるかも。少なくとも私は今のメンバーで食べるときが一番おいしいかな」
「私も私も!」
姉さんの言葉に、天音が手を挙げて元気にそう言った。
「確かにそれはそうでしょうね。……ってあまり話してると冷めちゃいますよ」
「うんうん。冷めると勿体ないからね」
天音はそう言うと、無言になりカレーライスをパクパクと食べ始めた。俺たちはそんな彼女の後を追うようにして、再びスプーンを動かした。
「ごちそうさまでした!」
「お粗末様でした。それにしても天音ちゃんたくさん食べましたね?」
「うん、だって美味しかったんだもんしょうがないじゃん!美姫ちゃんだっておかわりしてたじゃん」
「それは確かにしましたけど……おかわり三回は正直驚きましたよ?」
天音はあの後、結局カレーを三回おかわりして四杯食べた。とはいえ、天音以外の皆も一回ずつおかわりしていた。それほど美味しかったわけで、天音があれほど食べたのも納得はする。
「食べたら運動しないと……ですね?」
「うっ……確かに。美姫ちゃんの家の運動場貸してー?」
「分かりました。この後一緒に運動しましょう」
カレーを食べ終えた後、俺たちはお開きになった。姉さんと美姫は家に帰り、天音は美姫の家に向かった。二人で食後の運動をした後、そのままお泊り会をするんだとか。




