#86:ソファーでドキドキ
何か思ったより長くなっちゃいました。
今日まででこの話終わりにしようと思ってたんですけど。もう一話分くらいかかりそうです。
明後日以降に明日香ちゃんとのデート入れる予定です。
「後の調理過程は一人でやってもそこまで時間かからないので作っておきますね。お兄ちゃんたちはリビングでのんびりしててください」
「分かった」
結局、千春と姉さんがキッチンに残って残りの過程を行うみたいだ。俺と美姫と天音はリビングへと移動した。俺がソファーへと腰かけると、二人は当然だとばかりに俺の両隣に座り体を預けてきた。何だろうか、体を寄せ合ったりするのは普段からよくやってるんだけどいつもとは違った気分になる。
「優也君、何か私たちに隠してますか?」
「え?」
「え、優君私たちに隠し事!?」
「何か迷っているような様子だったので。……そうですね、明日私と出かけましょうと言ったら困りますか?」
「明日は……」
俺か言い淀むと美姫は微笑んだ。
「明日香さんとのデート……ですよね?」
「え、そうなの優君」
「……知ってたのか?」
「はい、明日香さんが自慢気にメッセージを送ってきたので」
美姫はそう言うと、姉さんとのメッセージ履歴を見せてきた。文面だけでも姉さんの喜んでいる表情が浮かんでくるほどのメッセージ内容だった。
「明日かぁ。私も行きたいよぉ」
「あ、天音。それなんだけど」
「天音ちゃん、明日は二人でデートさせてあげてください。優君は明日香さんと千春ちゃんとどう付き合っていくか真剣に見極めたいんですよね?」
「何でそれを」
「そうですね……優君の性格と最近の表情と乙女の勘から導き出しただけです」
「お、おう……そうか」
何かそれを聞くと、美姫には全てお見通しのように聞こえてしまう。流石にそんなわけないか。それにしても俺は自分の思っていることが表情で分かるのだろうか。
「……そんなに表情で分かるのか?」
「はい」
「うーん……分かんないかなぁ。でも偶に分かるときもある」
どうやらある程度顔に出やすいタイプらしい。
「そんなに難しいこと考えずに、今はリラックスしてください」
「うんうん、そうだよ!折角ソファーでこうやってのんびりイチャイチャできるんだし……えへへ」
天音は自分の言った言葉で少し照れていた。
「ふふふ。天音ちゃん可愛いですね、優君?」
「うん、そうだな。天音も美姫も二人とも滅茶苦茶可愛いよ」
俺がそう言うと、天音は顔を真っ赤にして、すぐに俺の肩に顔を接触させて隠した。そんな天音の様子に可愛いと思いつつ、美姫の方を見ると彼女とばっちり目が合った。
「えっと……その私も可愛いですか?」
「勿論。今も昔もずっと可愛いよ」
「はぅ。優也君それはずるいです」
美姫を見ると彼女も顔を真っ赤にしていた。そして、天音と同じように俺の肩に顔を接触させて隠した。
「あ、あのー二人とも」
左右から密着されて身動きが取れない。俺は二人に声をかけたのだが、二人とも無言だった。いや、この場合無言ではなくて無反応か。
「優君が可愛いって言ってくれた」
「優也君がかわいいって言ってくれました」
凄い小さな声だが、二人ともそんなような言葉を複数回言っていた。二人のことを可愛いって毎日のように思ってるし、いつでも言えるんだけどなぁ。付き合ってからというものの彼女たちのペースに俺が合わせることがあったから、いざこうして俺がこんな感じで好きとか言うことに対する耐性が二人にはまだないのかもしれない。
それでも、自分の気持ちを伝えることは大事だし彼女たちには少しずつ慣れていってもらうしかない。
「……って、お兄ちゃん何してるの?」
「美姫ちゃんと天音ちゃんに何かしたのかな?」
いつの間にかリビングに千春と姉さんがいた。俺が事の顛末を話すと二人とも納得したような表情を浮かべた。
「お兄ちゃん普段鈍感だからね」
「それに意外なときに、全力でドキドキさせにくるからね」
「あ……滅茶苦茶わかります、それ」
二人はまた俺を置いて意気投合してしまった。しばらくの間俺はソファーから動くことはできなかった。




