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#79:中間テスト一日目

テストの話になります。

 その日はそのままお開きという形になった。勉強会が終わった頃には、普段通りドキドキすることもなくなっていた。


 翌日以降の勉強会は、集中して勉強に取り組むことができた。分からない所は美姫や渡会に教えてもらいつつ、一問一問的確に問題を解けるようにしていった。




「これでようやくテスト前最後の勉強会終わりだね」

「ああ、そうだな」


 天音が少し疲れたような表情を浮かべながらそう言った。


「油断してはいけませんよ、天音ちゃん。本番は明日ですし、明後日以降の教科も勉強しなくてはなりませんからね」

「そうね。天音さんは大丈夫だとは思うけれど……月田君はこれで終わりだと思ってはダメよ?」

「はい……心得ております」


 テストのために勉強しているんだからなぁ。テストで点数を取れなければ勉強した意味がないとは言わないけど、勉強した意味が小さいものになってしまうことに変わりはない。


「関係なさそうにしているけど、茜ちゃんもそうだからね?」

「あ、はい。明日香先輩。私頑張ります」


 小泉は少しげんなりした様子で姉さんにそう返した。美姫と違って姉さんはスパルタだからなぁ。実際近くで見てたけど、少し大変そうだったからなぁ。まぁ、小泉だし助けてやる義理も特にないので自分の勉強をしていた。




「さて、そろそろHRが始まってしまいますね」

「うん、優君どう英単語覚えられそう?」

「まぁ、ボチボチかな。最後に見た奴が運よくテストに出てくれたら儲けものってことで」


 俺は今彼女たちと会話しながら英単語帳を見ていた。初日の一時間目は英語のテストだ。二つあるうちの片方の英語がある。テスト前に教科書の本文の内容を見返してもいいんだけど、それは美姫に一通り教えてもらっているのでそこまで懸念する必要もないだろう。ということで、英単語帳を見ていた。



 すると突然、天音が俺の両腕を両手でそっと包み込んできた。


「優君、頑張ろうね」

「ああ。天音も頑張れよ」

「勿論。今回こそは負けないからね、美姫ちゃん」

「私も勿論負けるつもりはないわ、美姫さん」


 天音と渡会はそう言うと、美姫の方を見た。美姫はクスっと笑った後、嬉しそうな表情を浮かべた。


「ええ、勿論私も全力で頑張ります」

「あはは……美姫ちゃん全教科満点取っちゃったら勝てないんだけどなぁ」

「それは、そうね」

「同点ならば二人の勝ちで構いませんよ?」

「それなら、頑張る!」

「ルールを変えたことを後悔するといいわ」


 美姫と天音と渡会が、お互いに宣戦布告をしあっている。全教科満点とか俺にとって相当遠い世界の話をしてるなぁ。




「とりあえず初日お疲れさまー!みんな、どうだった?」

「私は国語で一問自信がないのがあったわね……悔しいけれど」

「私はどうでしょうか?……つまずいた問題は特にありませんでしたけど」

「それじゃあ、私と同じだね!優君はどう?」


 天音は嬉しそうな表情を浮かべた後、俺に成績を聞いてきた。


「皆ほど良いわけじゃないけど、まぁまぁ解けたんじゃないか?前回よりは点数上がってると思う」

「それは良かったです。それじゃあ、今日は時間もありますし早速天音ちゃんの家に向かいましょうか」

「うん!……あっ、お昼ご飯どうしよう?」

「それなら、セバスに頼んでお弁当を用意させますね」

「本当に!?助かっちゃう、ありがとう」

「これくらい大したことありませんよ。私が何かしているわけでもないですし」


 美姫は天音に頼られて嬉しそうに頬を掻いた。


「あ、勿論渡会さんと小泉さんの分もご用意しておきますね」

「私も……いいのかしら?」

「遠慮なさらないでください」

「それじゃあ、ご厚意に甘えさせてもらうわ」


 すると可愛らしい音が鳴った。


「あはは……お腹すいちゃったよぉ」


 天音のお腹の音が鳴った。どうやら、彼女はすでにお腹がすいてしまったらしい。俺と美姫と渡会は顔を合わせるとクスっと笑った。


「あー笑わないでよぉ、もう!」

「ふふふ、ごめんなさい。それじゃあ、早く帰りましょうか」

「そうだな」

 俺たちは、校門付近で待っていた姉さんと小泉と合流して、天音の家へと向かった。

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