#7:3人デート(前編)
3人とのデートです。
二人目の仮彼女が出来てしまった翌日、俺はいつものように千春に起こされた。しかし、起こし方はいつもと少し違うものだった。唇に違和感を感じ、目をゆっくりと開けると俺にキスをしている千春の姿があった。
千春は俺が目を開けたのを確認すると、顔を離した。
「おはよう、お兄ちゃん!」
「ち、千春?」
いやそんな爽やかな笑顔で言っても、お兄ちゃんにキスをした事実は変わらないんですよ?ここまでストレートにキスをされたのは久しぶりだ。いつもは「好き好き」とか言ってはいたのだが、せいぜい抱き着くかベットに潜り込むぐらいで、兄妹としてギリギリのラインを保っていたんだけど、どうやら昨日の一件で吹っ切れてしまったらしい。
「それでは行ってきますね」
「千春ちゃん行ってきます」
「行ってらっしゃい。今度埋め合わせ期待してるからね、お兄ちゃん」
「お、おう?」
今日一緒に出掛けると知った、千春が自分も一緒に行きたいと言っていたが小泉も来るし遠慮してもらった。
ショッピングモールまでは、美姫の家の人に送ってもらった。家の両隣がそれぞれ美姫の家と天音の家なんだけど、左にある美姫の家は滅茶苦茶広い。俺たちの家何個分あるのだろうか。俺たちを目的地まで送迎してくれる車も豪華なものであった。
「ふえぇ。あの先輩、豪華すぎませんかこの車?」
「あはは、まぁ美姫だからな」
「うーん、もう私たちは慣れちゃったかな」
「まぁそうなのかもしれないですけど……送迎でリムジンカー使いますか普通?」
昔から三人で少し遠いところに遊びに行くって決まったときはいつも送ってもらっているため、もう俺たちはこの車を見てもあまり驚いたりはしない。ただ、普通に生きていたら乗ることはないであろう、リムジンカーを見て小泉は滅茶苦茶驚いていた。
「どうやら着いたみたいですね。手をつないでもいいですか、優也君」
「ああ、勿論」
そう言うと俺は美姫に手を差し出した。美姫は手を取ると指と指を絡ませて恋人つなぎをしてきた。
「反対側は私がもらうね、美姫ちゃん」
「構いませんよ」
「ありがと。それじゃあ失礼するね」
天音は反対側の手を普通に繋いだ。指と指を絡ませない、恋人つなぎではない友達同士でやる手をつなぐ動作だ。小泉には仮彼女のことを言ってないからか、事前に美姫が天音に対して人前で恋人つなぎはしないでと言っていたからだろう。
公共の場で抱き着いたりすることを黙認しているけど、キスと恋人つなぎは駄目らしい。今のところという言葉を強調していたのが、少し気になるけど。
「ああー、二人にとられちゃいました。むむむ、仕方ないから今は諦めますか」
「あ、もしよかったら後で変わろうか?」
「いいんですか!?」
「勿論」
「ありがとうございます、天音先輩。これで先輩を誘惑できますね」
「うんうん、一緒に誘惑しちゃおうね」
おいそこ何を企んでいるんだ。天音と小泉が何かコソコソと話しているがよく聞こえない。無理やり聞こうとしたのだが、美姫に止められてしまい話の内容をよく聞くことができなかった。
そして、俺たちはそのまま服売り場へと向かった。美姫と天音、それから小泉に俺の好みを聞かれてプチファッションショーが開かれるほど、たくさんの服を試着していた。美姫と、天音、それから一応小泉も容姿が整っているため注目されやすい。服を勧めてくれた店員さんも彼女たちに釘付けになっていたように思えた。同性の店員さんをも魅了するほど、可愛いんだもんな。
ちなみに、今回は俺のお気に入りの服を一人一着ずつ選ばされた。滅茶苦茶悩んだけど、美姫は白いワンピースが、天音は黄色のふりふりが付いたドレスだ。ちなみに小泉は黒い悪魔のしっぽが付いていそうな黒い服が似合っていた。