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#71:小さな感情

彼女はいるけど鈍感なんです、優也君。

普段からからかってくる後輩と、少し棘のある同級生の気持ちに気づかない。そんな彼の気持ちに少し変化が!?

「それじゃあ、美姫先輩たちと合流しに行きましょうか」

「……そうね」

「……ああ」


 映画が見終わった後、俺たちは美姫たちと合流するために席を立ちあがった。恥ずかしさから俺は一度相槌を打ったきり何も話していない。




 そして、何故か今俺は二人と手をつないでいる状態だ。食べ物をゴミ箱に捨てた後、三人で再び歩き始めたんだけどその時何故か小泉が突然俺の手を握ってきた。唐突過ぎて揶揄ってきたのかと思ったんだけど、何故か目を合わせてくれない。


 そしてそれを見ていた渡会が反対側の手を無言で握ってきた。何故と思いつつも彼女の方を見ると目をさらされてしまった。二人とも俺が向くと目をそらされてしまうので、諦めて前を向くことにしたんだけどどういう状況だこれ。


 実は二人して協力してて、「はいドッキリでした」って言われる方がしっくりくる。カップルジュースを頼んだのも恋愛映画を見させてドキドキさせた後に手をつないでくるとういのであれば分かるんだけど。だったら何故目線を合わせてくれないんだろうか。俺をからかうのであればこちらを見てくる気がするんだけど。どういう意図があるのだろうか。じっと小泉の方に視線を向けると彼女はピクッと肩を震わせたがすぐにそっぽを向いてしまった。




「いやーごめんねー。って、あれどうしたの?手なんか繋いじゃって」


 映画館から出たところで、既に皆は待っていたようだった。姉さんは俺たちを見つけると開口一番にそう言った。そこで二人は慌てたように俺から手を離した。


「どこまで進みましたか?」

「いや……あんまり進展はないですよ」

「私たちがどきどきさせられて、それどころじゃなかったわ」


 美姫に何かを聞かれた二人が、小さな声で何かを言っていた。小さい声だったので何を言っているか聞き取ることはできなかった。




「それではそろそろ帰りましょうか」

「うん、帰って優君成分補給しなきゃ」



 天音はそう言うと、俺と手をつないできたそんな俺たちを見ていた天音が反対側の手を握ぎった。その後、彼女たちは腕を絡ませるようにしてきた。俺の彼女であり、もちろん二人とも大好き。今もドキドキしている。けど、映画見終わって渡会と小泉と手をつないでいた時はもっとドキドキしていたよな。美姫と天音は彼女以前に、幼馴染という関係が長く続いたからこそ安心できるってことなんだろうか。うーん、よく分からん。




「美姫先輩、荷物全部まとめ終わりました!」

「私も大丈夫よ」

「分かりました。セバス、彼女たちの荷物をお願いします」

「かしこまりました。ご学友方は責任をもって、ご自宅まで送り届けますぞ」


 美姫の家に戻った後、すぐに渡会と小泉の二人は荷物を片付け始めた。とは言っても朝の時点で大体片づけていたみたいだから、ほとんど片づけるものもなさそうだった。


「それじゃあ、また学校で会いましょう!」

「ええ。また休み後かしらね?」

「はい、お気をつけて」

「二人ともまたねー!」

「お気をつけて」

「じゃあ、また学校で会おうね」


 渡会と小泉に対して、皆が一言ずつ喋った。その間も、俺は二人にあまり視線を合わせられなかった。結局、皆に同調する形で何とか彼女たちを見送った。


「ふふふ、何かあったのかな優君?」

「ね、姉さん。いや、特に何もないけど」

「ふふん、そっかそっか」


 姉さんは全てわかってますとでも言いたげな様子で、俺のことを見てきた。


「何もなかったら手なんか繋がないと思うけど。まさか……お兄ちゃん二人も彼女にしちゃったの!?」

「いや、してないから!?」


 何を言い出すんだ、千春は。二人にそんなこと口が裂けても言えない。そんなことを言おうものなら、一人は俺のことをからかってくるだろうし、もう一人は冷めた目で見てくることだろう。


「むぅ、優君滅茶苦茶恥ずかしそうにしてんだけど何もなかったの。本当に?」

「天音ちゃん、それくらいにしておいてください」

「美姫ちゃんがそう言うなら……分かった」


 彼女たち――特に小泉は今日ほとんどからかってこなかったな。まさか、本当に。あれ、よく分からなくなってきたぞ。



 今日一日の二人の態度を改めて思い返してみて、二人の思惑が分からず困惑した。しかも、手をつないだことやカップルジュースを一緒に飲んだことがフラッシュバックしてしまい、ドキドキが止まらなくなる。結局、俺は考えることを諦めたのだった。

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