#6:月田 千春
妹キャラ登場です。
それから一日、俺は彼女たちに振り回されてへとへとになりながらも家に帰った。玄関を開けて、靴を脱ごうとすると、家の中から走ってくる少女がいた。
「お兄ちゃん、おかえり」
「ただいま、千春」
――月田 千春。俺の妹だ。年は二個下で、来年は俺と同じ学校を目指しているそうだ。中学三年生になれば、ほとんど会話を交わさなくなるらしいのだが、千春とはそうなったことがない。
むしろ、その逆で休日は一緒に出掛けたりすることもあったり、一緒に部屋で過ごしたりと距離は近い方だろう。中学生になっても、寝ぼけたとか言って週に三回から四回程度は俺のベットにもぐりこんでくるありさまだ。翌朝俺が彼女のことを起こすと、目をごしごしとさせながらも俺に抱き着いてくる。
そんな彼女だが、美姫や天音との関係は良い。美姫も天音も千春のことを本当の妹のようにかわいがっており、千春もお姉ちゃんなどと言って偶に甘えていたりする。
着替えが終わり、リビングに出ると千春が突然話を切り出した。
「そういえば、聞いたよ?お兄ちゃん、美姫お姉ちゃんと付き合ったんだって?」
「ああ、そうだけど」
「負けちゃったかぁ。でもお兄ちゃん、子供のころの約束は忘れてないよね?」
「千春を俺のお嫁さんにするだっけか?だけど、将来俺のお嫁さんになるのは」
「その先は言わなくても大丈夫だよ」
千春はそう言うと、俺の口をふさいだ。俺としてはその約束をした記憶はないのだが、千春がいつの日からか毎日のようにそれを言ってくるので「え、何それ?」とは今頃言えないのが悩みである。本当にその約束はしてたと両親も言っていたし。
「どんな形になろうとも、私はずっとお兄ちゃんのそばにいるからね?お兄ちゃんは美姫お姉ちゃんと付き合うのかもしれないけど、私と天音お姉ちゃんは諦めないからね」
千春は自信満々にそう言った。事実、天音は俺のことを諦める様子はない。今も仮彼女として、俺の彼女になろうとしているからな。
「話は聞かせてもらいましたよ」
「美姫!?それに天音も」
「優君、千春ちゃんやっほー」
「話は聞かせてもらったって……今の聞いてたの!?」
「ええ、ばっちり聞かせていただきました」
「今までお兄ちゃんにしか言ったことないのに……恥ずかしいよぉ」
千春はそう言うと俺に抱き着き、俺の胸に顔を埋めた。そんな千春を見て美姫は微笑ましいものを見るような目で見ていた。あれ、何か嫌な予感がする。
「でもこれで確信が持てました。千春ちゃん、実は相談があるんですけど」
「そ、相談ですか!?」
「美姫!?」
「優君は少しだけ黙ってて。お口チャック」
天音は人差し指と中指を俺の唇に当てて、俺が美姫の話を遮ろうとしていたのを止められた。そして、その間に天音が仮彼女であること。最終的には俺に天音も彼女として認めさせるということまで千春に話してしまった。
「なるほど、私もお兄ちゃんの彼女に。確かに正式に結婚できるのは一人だけど、愛し合う分には何人いてもいいんですもんね」
「そういうことです」
「それに、これならお兄ちゃんと合法的に愛し合うことも可能ってことですね?」
千春はそういうと嬉しそうに俺のことを見てきた。
「それに千春ちゃんと天音ちゃんみたいな可愛い子を、優也君以外の男にお嫁に出して堪るものですか」
むむむ、確かにそれを言われると少し弱いものがある。兄と結婚しようとしていて妹としてどうなのかという問題はあるが、確かに可愛いのは間違いない。千春が誰かのもとにお嫁に行くとなったら、しばらくの間落ち込みそうだ。
「美姫お姉ちゃん……ありがとうございます」
「美姫ちゃんにお礼を言うのはまだ早いよ?千春ちゃん、折角美姫ちゃんにチャンスもらったんだから、一緒に優君を惚れさせようね」
「はい、勿論です。あ、そうだお兄ちゃんの好きなタイプとか私知ってるので……」
そう言うと、千春は天音を引き連れて自分の部屋に入ってしまった。
「ということで、千春ちゃんも仮彼女としてよろしくお願いしますね」
天音に返事を出す前に、美姫によってもう一人仮彼女を増やされてしまった。しかも、相手は妹である。どんどん、外堀を埋められているような気がするけど、気のせいか?