#67:カラオケ
GW編はおそらく次回あたりで終了にする予定です。
意外と想定より、長くなっちゃいました。
ボウリングで遊んだ後、俺たちは地下にあるカラオケルームへと向かった。カラオケルームに行くことになったのは、天音が折角なら皆で歌いたいからと言ったからだ。
「それじゃあ、まずは誰から歌いましょうか?」
「クジでいいんじゃないかしら?」
「賛成です!」
「分かりました。それではクジで選ばさせていただきますね」
美姫はそう言うと、俺たちの名前が書かれたくじを用意した。そしてクジの箱の中から一枚の紙を取り出して、折りたたまれた紙を開く。
「優也君ですね」
「わぁ、優君最初だぁ」
どうやら、一番手は俺に決まったらしい。
「お兄ちゃん、何の歌を歌うの?」
「俺が好きな曲を歌おうかな。えっとちょっと待ってて……うん、あった」
俺はパネルを操作して、お目当ての曲を探した。二人組の有名なフォークデュオである雪が歌う、冬色という曲だ。この二人組はかなり人気があり、特にこの歌は一度は聞いたことがあるって人がほとんどなんじゃないかと思う。かくいう俺はこの曲が大好きであり、落ち込んだ日にはよく聞いていたりする。
「それじゃあ、歌うよ」
「頑張ってね、優君!」
「ああ」
天音からの声援を受けて、曲の再生ボタンを押した。
「うん、上手だったよ優君」
「あ、ありがとう姉さん」
歌い終わって開口一番姉さんが褒めてくれた。他のメンバーを続くようにして、俺の歌をほめてくれた。
「それじゃあ、二番手は……っと、渡会だな」
「分かったわ。それじゃあ準備するわね」
「渡会先輩、本当に歌えるんですかー?」
小泉が渡会に揶揄うように言う。渡会はため息を吐きながらも「大丈夫よ」と返していた。
渡会の歌は洗練されたような歌だった。曲こそ、少し古めの物であったが聞くものが圧倒されるような素晴らしい歌だった。
「凄かったですよね、先輩?」
「ああ、何か洗練されたような歌だった」
「幼い頃から、両親に色々教育されていたからそれの名残よ。歌もその時に教えられただけだけよ」
渡会は少しだけ表情を暗くするとそう言った。確かに親から教えられたものかもしれない。けど、やっぱりさっきの歌は凄いものだった。俺のその考えを口に出してみることにした。
「それでも凄かったよ」
「そうです。色々な曲を聞いて、歌いたい曲を探してみてはどうでしょうか?」
「うん。瑠璃ちゃんにピッタリな曲きっと見つかるよ」
俺が口に出して褒めると、美姫や天音が続くようにして渡会の歌をほめていた。他のメンバーは何かを騙ることはなかったが、みんな頷いており同じことを思っているのだろう。
「そ、そうありがとう……それじゃあ、少し探してみるわ」
渡会は少し考え込んだ後、照れるようにそう言った。
「三番手は、姉さんかな」
「オッケー。それじゃあ、渡会さん折角だしこのデュオ曲歌わないかい?」
「……これはアニメソングですか?」
「うん。さっきの歌とは違って明るい曲だからどうかなって?」
「えっと、折角なのでやってみます」
「決まりだね」
三番手の姉さんはアニソンを渡会と一緒にデュオで歌うらしい。渡会は初めて聞く曲だと言っていたけど、歌詞が流れるから全く歌えないことはないだろう。
――そう思っていた。
「うわぁ、瑠璃ちゃん凄いよ!」
「初めてうたったとは思えないくらい、お上手でしたよ」
「うんうん、一緒に歌っている私も驚くほど完璧だったよ」
初めてうたったとは思えないほど、完璧に歌って見せたのだ。何回も練習して歌えるようなレベルだ。そして、先ほどとは違って笑顔で歌っており、心の底から楽しんで歌えたんだと誰が見ても分かった。
「ありがとうございます。この曲歌いやすくて結構楽しかったです」
「それなら良かったよ。また一緒に歌ってくれるかな?」
「是非、お願いします」
そう言うと、姉さんと渡会が握手をした。




