#4:赤坂 葵
新ヒロイン登場?
教室では俺は、少々浮いてしまっている。まぁ、彼女たちが原因なわけなんだが。そのせいで男子からの嫉妬の対象になってしまい、一人を除いて俺に話しかけてくる人物はいない。
俺たちが、教室に入ると既に教室にいた一人の生徒が挨拶をしてきた。
「お、おはよう優也君」
「おはよう、葵」
――赤坂 葵。茶色の髪が特徴的で、髪はショートカット。さらに、天音よりも背が低く可愛らしい見た目で、特に女子から人気を誇っている。こんな言い方をすると誤解されるかもしれないから、言っておくが彼は男子である。
学校で裏に行われている、例のランキングでも何故か葵はいつも一桁に入っている。しかも声も可愛らしく、初対面の人と会うと必ず女子と勘違いされている。
「おはようございます、葵君」
「葵ちゃん、おっはよー」
「と、東条さん。恥ずかしいからちゃん付けで呼ばないで……ほしいかな」
「えー。でも葵ちゃん可愛いから別にいいと思うんだけどなぁ?」
「僕は男の子だもん」
天音に葵ちゃんと呼ばれて、むっとしている表情を見てもやはり女子にしか見えない。声が低かったり、身長がもう少し高かったり、性格が控えめでなかったらまた違っていたのかもしれないけど。
「そんなことよりも、距離近くない?」
「距離ですか?」
「うん。三人っていつも仲良しだけど、そんなに距離近かったかなって?それに二人とも、すごく幸せそうな表情してるし」
「そうでしょうか?」
「わ、分からないけど。そんな顔してるかなぁ?」
天音はそう言うと、手鏡を取り出して自分自身の顔を見ていた。天音はともかく、美姫は原因をわかったうえで言ってるからな。それにしても二人には、普段通りに振舞って惜しいと学校に前に頼んでおいた。俺の目から見ても違和感はないはずなんだけど、それに気づくなんて、葵の勘は鋭くないか?
確かに男女で手をつないで歩いてきたらそれは疑われるのかもしれないけど、俺たちは普段通り手をつないで登校してきているだけだ。今更だけど、普通の友達がこんなことしないよなぁ。とはいえ、俺たちは普段から手をつないでいるし幼馴染の関係であることは、勿論葵も知っている。だから、今のこの現状を居ても違和感を感じないはずなんだけど、天音と美姫の表情から何かを感じ取ったらしい。
葵に仮彼女と彼女のことを言うつもりはない。彼女ができたことはともかく、仮彼女と言ったら普通は聞こえが悪いだろう。でももし本当に、二人と付き合うんだとすれば……その時は葵にだけは話してもいいのかな。
あれ?いつの間にか、天音を彼女で認める前提で考えてないか?
「そっか、てっきり二人にいいことが起きたんじゃないかと思ったけど、僕の勘違いか。ごめんね、疑って」
「いえ、気にしていませんよ」
「うんうん。でも、私は優君と美姫ちゃんと毎日一緒にこうやって生活できるだけで幸せだから」
天音はとびきりの笑顔で、俺の方を見てきた。
「ああ……そうだな」
「優也君?」
「な、なんだ!?葵」
「うーん……まぁ、いいや。ごめん僕、少しお手洗いに行ってくるね」
そう言うと、葵は席を立ち教室を出て行った。
「葵君には勘づかれてるみたいですね」
「俺たち、そんなに分かりやすかったか?」
「いつも通りだと思うんだけどね。どう思う、美姫ちゃん?」
「そうですね……多分普通の人は気づかないと思いますよ。葵君が特別、そういったことに鋭いのでしょう」
「何か浮気現場を問い詰められてるみたいな気分になったのは俺だけか?」
「まぁ、実際本当のことを知れば世間的にはそう思われるのは仕方ないことだと思いますよ?」
その原因を作ったのは美姫なんだけどな。
「まぁ、安心してください。私たちは、そんなこと言いませんから。何があっても貴方のそばにいます」
「わ、私も!優君と美姫ちゃんのそばにずっといるから」
俺たちは、そう言うと微笑みあった。
葵ちゃん……葵君は新ヒロインではありません。次回は、新ヒロインを出す予定です。