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#41:渡会は運動嫌い

(ただし、別に滅茶苦茶苦手というわけでもない)

はい、お待たせしました。渡会さん回になります。

今回多分初めて、美姫ちゃんと天音ちゃんが登場しません。

「それじゃあ朝のHRを始めまーす」


 先生の一声で、今日も一日学校が始まるんだなと自覚させられる。そしていつも通り先生から諸連絡があるわけなんだけど、最後のお知らせはいつもと違い、ありふれたお知らせではなかった。


「それじゃあ、今日は体育祭の種目決めを行いまーす」


 そう何を隠そう、毎年一回行われる体育祭が迫ってきているのだ。そして今年もこの時期がやってきたいみたいだ。ちなみに俺は運動は、極端に苦手というわけではないが別に得意かって言われるとそうでもない感じだ。


「た、体育祭ねぇ」

「大丈夫か、渡会?」

「大丈夫に見えるのかしら?というか、この行事、勉強をしにきている学生にとって必要のないものだと思っているのだけれど、月田君もそう思わない?」

「まぁ、やるってことは何らかの意味はあるんじゃないか?というかそもそも渡会はただただ運動が嫌いなだけだろ?」


 俺は顔を伏せて嫌そうに落ち込んでいる、彼女に呆れながらそう言った。そう彼女は頭はいいが、運動は嫌いなのだ。とはいえ彼女も極端に苦手っていうわけでもなさそうだったんだけど、どうやらやっぱり嫌いらしい。


「そんなにため息ばっかり吐いていると幸せ逃げちまうぞ?」

「また随分と迷信を信じているのね。でも確かに、それは困るわね」


 渡会はそう言うと何かを考えるようなしぐさをしていた。俺がさっき言ったことに対して迷信とか言ってたけど、滅茶苦茶悩んでないか?


「いや、渡会だって信じてるんじゃ?」

「何のことかしら?月田君が言うから話に乗っかってあげただけよ。不幸になっても困るし言い出した月田君が、今度の体育祭で学年優勝出来たら私を幸せにしてみなさい?」

「は、いやいやどういうことだよ?」


 俺が彼女のことを幸せにする?何を言っているんだ。そもそも幸せって人それぞれ違うものだし、俺自身は彼女の幸せが何かが分からない。


「どういうことも何もそのままの意味よ。私が楽しいと思えることをしてくれればいいわよ」

「そ、そういうことならまぁ」

「言ったわね。それならばやる気が出てきたわ」

「えっと……それは何よりだけど」


 渡会の突然の変わりように思わず引いてしまった。だって、さっきまで全くやる気のなさそうにしていたやつが、優勝出来たら楽しいと思うことをしてあげると言っただけでこれだけやる気を出してるんだぜ?


「それでは、この後は渡会さんにお願いしますね」

「分かりました」


 先生に言われて、学級委員長である渡会が席を立って前に歩いて行った。本当に、先ほどまでやる気がなさそうにしていたのになぁ。


 そして、希望を取って余りは渡会が個人個人の力を考えたうえで最適な場所に入れていくという方針に決まっていた。後で名簿を見せてもらったんだけど、組み方からいかに優勝を目指しているのかが分かる。というのも名簿の欄にたくさんメモ書きがされていて、種目ごと入れたい人の優先順位何かも書いてあった。


「本気で勝ちに行くつもりなんだな」

「ええ、元々体育祭に関しては順位はどうでもいいと思ってたのだけれど、月田君が優勝したら私を幸せにしてくれるらしいから頑張るわ」

「何か若干ニュアンスが変わってないか?」

「何のことかしら?」


 楽しませると幸せにするって意味が違うような気がするんだけど。楽しませるだけならばともかく、幸せにするとなるとかなりの時間が必要になる気がする。それに渡会がそれほど幸せじゃない生活をしているようにも見えないしなぁ。そう思っていたら彼女に鋭い視線を向けられてしまったので、話題を変えることにした。


「つーか何で俺は借り競争なんだ?」

「私もそうよ。だって楽じゃない」

「お前なぁ……まぁ確かに楽だけどさぁ」

「ふふふ。私も月田君のこと分かっているでしょう?」


 そう言うと彼女は、してやったりな表情を浮かべてきた。

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