#39:天音と二人きりのイチャイチャ
実は天音と二人きりって珍しい気がする。
あの後、俺たちはご飯を食べるためにリビングへと向かった。リビングのテーブルの上には盛りつけられた料理とメモが書き置かれており両親はもぬけの殻だった。メモを見ると今日は二人でこの時間から遊びに行くらしく、しばらくは帰ってこないらしい。
それは同時に、彼女たちと一緒にいる時間が増えるというわけだ。彼女たちは早速自宅に電話すると、俺の家に泊る許可を貰っていた。全員がさも当たり前かのように許可をもらっていた。別に天音の母親も美姫の両親も、姉さんの両親も放任主義というわけではない。単純にうちなら安心という意味なんだろう。
ご飯を食べ終えて、皆で風呂に入ろうという意見が出た。前回彼女たちと入った際に、俺は気絶してしまっていたので遠慮しておいた。四人とも、特にこの間一緒に入っていない姉さんは不満そうだったが、何とか説得できた。まぁ、これで彼女たちが諦めてくれるとは思わないけど。
俺がお風呂に入った後、彼女たちは皆で入っていた。何でも女子会が開かれるから決して除かないようにとのことだった。いや、別に覗かねぇよ。というか、いつも覗かれそうになっているのは俺の方なんだけどなぁ。
「優君、入るねー」
「どうした、天音?」
「お風呂あがったからとりあえず優君の部屋に来たんだ!美姫ちゃんに一番最初にドライヤーで髪を乾かしてもらったんだ。私髪短いから、先にやってもらっちゃったんだー」
「そ、そうか」
俺がそう言うと天音は黙ってしまった。彼女は俺の隣に座って、体を俺に預けてきた。天音が今何を思っているのかは分からないが、俺は凄くドキドキしている。だってお風呂上がりの彼女が俺の隣に座っているんだぞ。天音もどうやら恥ずかしいらしい。チラッと横を見るとこちらを見ていた天音と間があった。
「あ、優君。恥ずかしいよぉ」
「えっと、ああ悪い」
そう言えば、天音と二人きりって珍しいかもしれない。美姫を含めた三人でいることはあるけど。やべえ、そう考えると凄いドキドキした。天音は少し俯くと両方のこぶしを握って何かを意気込んだ後、俺の方を真っすぐと見つめてきた。
「どうかしたか?」
「美姫ちゃんたちが来るまでの間、二人っきりでイチャイチャしようよ」
「え、いいけど」
「ホントに!?やったー……えへへ」
天音はそう言うと、照れくさそうに頬をかいた。本人は全く意識していないんだろうけど、天音は仕草一つ一つとっても可愛いんだよなぁ。
「イチャイチャって言っても何をするんだ?」
「優君大変だよ。いつも美姫ちゃんに相談してるから、今日はどうやって優君をドキドキさせたらいいかわからないよ」
「あぁ、やっぱ時々過激な時大体美姫が言ってるのか」
「か、過激って。優君恥ずかしいから言わないでよぉ」
やべぇ、めっちゃ可愛い。そりゃあ、美姫も可愛いんだけど天音はまた違った可愛さがある。俺は天音の頭をそっと優しくなでてあげた。すると、彼女は気持ちよさそうに目を細めた。
「優君、お願いがあるんだけど」
今天音は俺の膝の上に腰を乗せて寝転がっている。膝枕とは少し違うけど、似たようなものだろう。そして、俺は今天音の頭を優しくなでてあげている。天音のお願いのためである。彼女のお願いは、全力で甘やかしてほしいらしい。とはいえ、何をしていいか分からなかったんだけど先ほど俺が頭を撫でたときに、甘やかされたいと思ったらしい。
「あ~優君の膝の上気持ちいいよぉ」
「お気に召しましたか、お姫様」
「優君……はい」
俺がふざけて天音のことをお姫様と呼ぶと、天音は照れ臭そうに返事をしてくれた。そして、俺はしばらくの間天音を甘やかし続けていた。
――髪を乾かし終わった三人が部屋に入ってきて、俺たちのことを見つけて同じことをしてほしいと頼まれることになるのだった。




