#3:起こしに来る彼女たち
美姫と天音は両親公認?
本物の彼女と仮の彼女――仮彼女ができた翌朝、俺はいつも通りに目覚めようとしていた。
「起きましたか?優也君」
「え?おわっ、何でここにいるんだよ美姫」
「彼女だからですよ。ほら反対側には、天音ちゃんもいますよ?」
振り返ると、すぐ目の前に天音の可愛らしい顔があった。
「おっはよー優君。よく眠れた?」
何故か俺は二人の幼馴染――彼女にはさまれた状態でベットの中にいた。昨日の夜は一人で寝たはずなので夜に何もなかったことは確かなんだけど。
「お前らいつ来たんだ?」
「三十分くらい前だよ。美姫ちゃんに優君の寝顔を見に行こうって誘われたから……一緒に来ちゃった」
天音は少しだけ恥じらうようにしてそう言った。今までも二人との距離が近いと感じたことはあったものの、流石にベットの中にまで入ってくるようなことはなかった。
「それよりよく家に入れたな」
「昨晩、朝優也君を起こしに行きたいと言ったら快く了承してくださいましたよ?」
「うんうん。私たちが朝、優君の家に来た時すごく嬉しそうな顔でお迎えしてくれたよ?」
今まで朝迎えに来てくれはしたものの、朝に家の中にまで入ってくることはなかったので何か嫌な予感がする。
「あ、ちなみに優也君のお義母様に朝、二人がお嫁さんに来てくれたら嬉しいと言われたので『二人でお嫁に行きます』って言っておきましたよ?」
「え、ちょっと待て。天音の件はまだ仮で決まってないんだよな?」
「まぁそれはそうですけど、優也君が天音ちゃんを彼女にするのにそう長いことかからないと思ったので、つい……てへっ」
「私もそれに賛同しちゃったけど、駄目だった?」
てへ、じゃねえよ。美姫に外堀から埋められてしまっているような気がする。天音は目に涙をためてうるうるとしながら俺のことを見てきた。ちくしょう、こいつらやっぱり可愛いな。
「さぁな」
否定したかったんだけど、僅か一日できっぱり否定することができないほど俺の心は揺さぶられてしまっていた。
ベットから出て、二人と一緒にリビングに向かうとテーブルにメモが残されていた。どうやら両親は俺たちに気を使って早く家を出て行ったらしい。まだ6時前だというのに、どこに行ったのだろう。というか、別にそんな気遣いはいらなかったんだけどな。朝ごはんは母さんが用意してくれたみたいなので、それを三人で食べることにした。
二人は俺にあーんをさせようとしてきたのだが、心を鬼にして断った。早くご飯を食べて、学校に向かわなければ奴が起きてきてしまう。普段はとてもかわいいんだけど、美姫と天音が来ると何故か不機嫌になってしまう。その時に不機嫌っぷりといえば大変で、天音はともかく美姫は俺の彼女になったわけだし、仲良くしてくれるといいんだけど。
しかし、朝から二人と一緒にいる現場なんて見られた暁にはどんな面倒なことが起きるかわかったもんじゃないので俺はさっさとご飯を食べて、学校に行く支度を済ませた。
「そんなに急がなくてもいいと思うんですけど」
「そんなこと言ってると置いていくぞ」
「私はもう行けるよ」
「私も大丈夫です。……私たちが来るのが少し早かったみたいですね」
「優君」
天音は俺のことを呼ぶと手をつないだ。普段はここまでだが、彼女はここからさらに指と指を絡ませてきた。
「えへへ、やってみたかったんだ」
「あっ、ずるいです。私もやりたいです」
美姫がそう言うので、天音とつないでいる手とは反対側の手で彼女の手を握り指を絡ませた。
「ふふっ、恋人同士ならもう少し密着しないとですね」
「あっ、私もやる!」
美姫はそう言うと肩を俺の肩と密着させた。そして、それに対抗するように天音も美姫の真似をした。途中で恥ずかしくなり、離れてもらうように二人にお願いをしたのだが、二人に拒否されてしまい、教室に入るまでこの状態だった。
奴とは誰なんでしょうね?




