#36:報告とハーレム設立の理由
はい。前書きで語るとネタバレになりかねないので今回は黙っておきますね。
後書きで色々と話します。
「優君……えへへ」
告白の後、三人でいつも通り帰ろうとしたのだが天音の様子がいつもと少しだけ違っていた。腕を絡ませて、肩を完全に密着してきた。普段は時々、少し距離を何かに遠慮するような仕草を見せることがあったんだけど、今日はそれが一切感じられない。
むしろわざと押し付けているのではないかと思えるくらいの密着度だ。先ほどから肩に胸が当たり、顔からはほんのりと甘い匂いがする。さらに、それを意識して彼女の方を見ると、そこには可愛い顔があってさらにドキドキさせられる。
俺はなるべく意識しすぎないようにするため彼女に視線から少し視線を逸らしながら何とか言葉を発する。
「あ、天音あんまり近づくと恥ずかしいんだけど」
「えー?でも、やっと優君と付き合えたんだからいいじゃん。ねー美姫ちゃん」
「そうですね。それじゃあ、反対側は私が失礼しますね」
そう言うと反対側を歩いていた美姫が、天音と同じように反対側の腕を絡ませて密着してきた。少し離れてほしいという意味を込めて言ったのだが、逆に美姫が天音と同じことを始めてしまったがために、完全に逆効果となってしまった。
右側には可愛い顔をした天音が、左側には整った顔の美姫。そして、腕に当たる柔らかい感触は二倍に増えて、心臓の鼓動が今までにないくらい早く動いているのを感じた。
「そうだ、優君の両親に挨拶しに行かないと」
「そうですね。お義母様は特に何かと気にかけていただきましたし」
「え、今から?」
「はい、勿論です」
「うん、私もご挨拶したいかな」
「何か結婚前の挨拶みたいになってないか?」
俺がそう言うと、美姫はキョトンとした表情を見せた。そして、ニッコリとした後俺はそう言った。
「え、そのつもりですよ?」
「え、そうだったの!?わ、分かった。頑張るね、美姫ちゃん」
「ふふふ、頑張りましょう」
「……え?本気で言ってますか、もしかして」
え、今から結婚しますって俺の親に言いに行くのか。いやいやいや、まだ準備できてないというか。いやまだプロポーズもしてないけど、それは大人になってからしたいんだけどなぁ。そう思って少し焦っていると、美姫が微笑みながら俺のことを見てきた。
「冗談ですよ。流石に今すぐ結婚の挨拶はしませんよ」
「なんだ、びっくりしたぁ。美姫ちゃんびっくりさせないでよ」
「ふふふ、ごめんなさい。二人の反応が可愛らしくてつい」
美姫はそういうと、舌を出して余り反省していなさそうに言った。
「あ、でも一応報告にはいきましょう」
「う、うん。頑張るよ」
「あ、やっぱりそれはするんだね。まぁ、いいけど」
「あら、今日も二人ともいらっしゃい」
「こんにちは、お義母様」
「こここ……こんにちはぁ」
天音は滅茶苦茶動揺しながら、母さんに挨拶をしていた。どうやら滅茶苦茶緊張しているらしい。
「あ、あの」
「うん、どうかしたのかい?」
天音は緊張した様子で、母さんの方を見ていた。そして、大きく深呼吸をするとついに話を切り出した。
「えっと、私……優君と付き合えました」
「あらまぁ。おめでとう天音ちゃん」
「ありがとうございます」
「こんな可愛らしい子たちが優也のお嫁さんになってくれるなんてねぇ。幸せにしてあげるんだよ、優也」
「うん、分かってる。勿論絶対に彼女たちを大事にして見せる」
少し気恥ずかしくなってきたので、俺は部屋に戻ることにした。美姫と天音は母さんと話があるらしく、リビングで少し話してから俺の部屋に来るそうだ。
「改めて、おめでとう天音ちゃん」
「ありがとうございます」
「それで美姫ちゃんから聞いているのかい?」
聞いているのかとはこの場合、私が優也君の彼女を増やそうとしていることですね。
「はい、聞いています。優君の傍にいて愛してくれるなら私は別に構いません」
「それにしても優也のハーレムって夢なんか無視してもいいのに。天音ちゃんには悪いけど、美姫ちゃんはあの時黙ってたら普通に二人だけで付き合ってたわけだし」
「まぁ、確かにそれはそれで魅力的かもしれません」
――私と優也君だけで暮らす未来。
「けど、そこには幸せそうにする天音ちゃんは居ません。それに家は、跡継ぎが多ければ多いほどいいですから。天音ちゃんも彼女にするなら、何人いたって私は構いませんよ」
でも私は、それを選ばなかった。天音ちゃんが居なかったら、考え方はまた違っていたのかもしれないですけどね。
「そうかい……まぁ美姫ちゃんたちがそれでいいなら、私としては可愛い義娘が増えるだけだし、嬉しいけどねぇ」
「ただ、誰でもいいと言うわけではありませんし、本当に優也君を好きな人だけを選びます」
これは絶対です。優也君のことを好きでない人を軽々しく恋人にするわけにはいきません。
「まぁ、それなら私としても文句はないよ……後悔だけはしてほしくないしね。一応天音ちゃんにも優也と付き合うことに対する後悔があるかどうか聞こうと思ったんだけど」
後悔はしてほしくない。お義母様が後悔はしてほしくないと言った時に、少し表情が曇ったような気がしました。気のせいだったらいいのですが。
「優君と美姫ちゃんと一緒に暮らしていけるなら、どんなことだって乗り越えられます」
「ふふふ、そうみたいだね。ほら、優也が待ってるだろうし二人とも行ってあげな?」
お義母様にそう言われた。気になったので少し聞いてみようかと思いましたが、迂闊に聞いていい話かも分からないし勘違いの可能性もあります。何より、優也君を待たせてしまっています。
「はい、それでは失礼します」
「あ、美姫ちゃん待ってー」
今は踏み込むべきではないでしょう。けど、私たちのことを応援してくれているお義母様の気持ちを少しでも晴らせるのであれば。ここまで考えてて、実は何もなかったらどうしましょうか。まぁ、今は優也君の部屋に行って癒されましょうか。
私は一人、そんなことを考えていました。
優也君のお母さんは美姫ちゃんのハーレムを設立する理由について知っていました。
天音ちゃんも詳しい理由は聞いていなかったものの、大雑把に話を聞いていたのでさほど驚いてはいません。
(優也君のお母さんのエピソード盛り込んだせいで、字数がいつもより増えた。)




