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#33:美姫は静かに怒る?

普段温厚な美姫ちゃんですが、どうしても許せないことがあるようで……?

 美姫と天音、それから姉さんの三人と一緒に学校に登校した。あの後朝ごはんが少し長引いてしまい、いつもより遅い時間に登校してしまったことで、周囲の目線がいつもより多い。ただ、原因はそれだけではないだろう。実は、姉さんと朝登校したことは今まででほとんどなかった。彼女は生徒会活動が忙しいというのもあるが、単純に嫉妬の視線を浴びるのが嫌だから断っていたということもある。ただ、昨日の姉さんの圧に負けて今日は渋々許したんだけど。


 今更姉さんがいても居なくても、この嫉妬の視線は変わらないのかね。美姫と天音それから姉さん――三人の美少女と一緒にいるからか、嫉妬の視線が凄い。


 俺たちに近づいてくる三名の男子生徒を横目で見た。あれはおそらく一年生だろう。彼らも入学してしばらくたってるから収まると思ってたけど、まだまだそうは行かないらしい。


「あの神無月先輩ですよね?」

「天音先輩連絡先交換してください」

「朝倉会長俺と友達になってください」


 新入生が美姫たちにアタックしに来たんだろう。男一人に対して、女子が三人いたら普通に考えて少なくとも二人はフリーだからな。丁寧な言葉遣いを装って入るが、下心が丸見えである。


 天音は誰とでも分け隔てなく接するが、あんまりこういったことは得意でない。何かを感じ取ったのか、怯えるようにして俺の背中に隠れた。


「はい、私は神無月ですけど。どうかしましたか?」


 唯一、まだ友達とか連絡先とかを聞いてこなかった男子生徒に対して、美姫は言葉を返した。


「あの、神無月先輩はそこにいる男と付き合っているって本当ですか?」

「どうでしょうね。どちらにしても貴方には関係ないことだと思いますけど」


 美姫にしては珍しく、バッサリと言い切った。心なしかいつもより声のトーンが低いような気がする。


「そうですか。まぁ、どちらであっても構わないんで」


 その男は急にへらへらし始めた。一言目とは随分印象が違う。そして彼はへらへらしたまま言葉をつづけた。


「そんな顔も普通で女侍らかしてる奴よりも、俺と付き合いません?」

「そうっすよ。天音先輩」

「朝倉会長も騙されてるだけっす」


「天音先輩、そんな所に隠れてないで」


 そう言って先ほどから天音を狙っているであろう男子生徒が、天音の腕を掴もうとした手を俺は振り払った。


「私が騙されてるって誰にかなー?」

「そんなのそこの男に決まってるじゃないですか」

「そうですそうです。だから美姫先輩もこんな冴えない男放っておきましょう」

「しかも暴力をふるうような奴だ」


 三人は、一斉に俺に非難の言葉を浴びせてきた。その時俺は美姫の頬がピクリと動いたような気がした。どことなく、彼女が怒っているような気がする。


「暴力って、あれは貴方が無理やり天音ちゃんに触ろうとしたからでしょ。大体……」


 俺は、少し怒ったようにそう言う姉さんの前に腕を出して彼女を制止する。


「誰が冴えないんですか?」

「そりゃあ、そこの男が……ひぃっ」

「私のことをとやかく言うのは構いませんが、優也君の悪口を言うなら許しませんよ?」

「ひ、ひぃ……」


 美姫に声をかけていた男子生徒の顔色と声色がどんどん青くなっていく。他の二人の男子生徒も彼ほどではないが似たようなものだ。声が荒ぶったりしているわけではなく、声の音程もいつも通りなのだが、何故かいつもの優しさはそこにはなく、突きさすような冷たい感じだった。何も知らない第三者が外から見ても、恐らく何も分からないとは思う。ただ、幼い頃から一緒にいた俺だから分かるのだ。――彼女は本気で怒っている。


「分かりましたか?」

「は、はぃぃぃぃ」


 三人組は、そう言うと慌てたようにその場から走り去っていった。美姫は少しため息を着いた後、俺たちの方に振り返った。


「彼らとは話し合いをしたので大丈夫ですよ……ってあれどうかしましたか?」

「いや、何でもない」


 俺の返事に対して、コクコクと無言で首を振って同調する天音と姉さん。やっぱり普段温厚な人ほど怒らせると怖いのは本当なのかもしれない。彼女を本気で怒らせることは冗談でもしないようにしよう。俺は心の底からそう思った。

ナンパされるだけなら、彼女はあそこまで怒ったりしません。

ちなみにあの三人組はもう出てこないと思います。

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