#30:自由奔放な従姉
明日香姉さん大暴走。
「それじゃあ、私たちはここで失礼するわね」
「また明日です、先輩」
途中で、瑠璃と茜の二人と分かれる。普段は、仲が悪そうに見える彼女たちだが実は最近一緒に帰っているらしく、もしかするとそれほど仲が悪いということはないのかもしれない。
「それで、今日は寄ってくのか?」
「勿論。一緒に帰るのに寄らない選択肢なんて存在しないよ」
姉さんの中ではどうやらそうらしい。別に家が目の前だから、一緒に帰るっていうのがまぁ普通なような気がするけど。
「あら、いらっしゃい。今日は明日香ちゃんも一緒なのね」
「ご無沙汰してます」
「ふふふ、ゆっくりしていってちょうだいね」
「はい!」
姉さんは母さんにそう言って元気に返事をした。すると、その声を聞いたのか上から千春が降りてきた。
「明日香お姉ちゃん、久しぶりです」
「千春ちゃん、久しぶりだね」
姉さんはそう言うと、千春に抱き着いた。そんな二人の微笑ましい様子に母さんも思わず微笑んでいた。
そしてそのまま、俺の部屋へと向かった。
「そういえば美姫って毎日のように俺の家に来てるけど、大丈夫なのか?」
「はい、流石に外に泊まるのは許してくれないんですけど優也君の家ならいつでもいいと両親が言ってましたので」
「私の家と一緒だねー」
「私の家も二人のところと同じかなぁ」
いいのだろうか。年頃の娘たちが異性の部屋に出入りしているんだけど。まぁ、天音のお母さんの性格からして許可を出すのは分かるけど、他の二人は何でなんだろうか。
「ねぇねぇ、優君は家でいつも皆と何をしてるの?」
「もう、皆がいる前提なんだね」
「事実でしょ?それに私も生徒会の仕事片付いたし、久々に泊まれるよ」
「え、姉さんも泊るの?」
「あったり前でしょー。二人も泊まってるのにずるいじゃん」
姉さんは不貞腐れるようにそう言った。普段、生徒会長として凛々しいイメージがある彼女がこんな表情をするなんて夢にも思わないんだろうなぁ。まぁ、俺としては見慣れたいつもの姉さんって感じだけどね。
「それに私だって部屋貰ってるんだからいいじゃん」
そう、空き部屋の家の一つを姉さんが使っていいことになっている。最初は、姉さんも遠慮して美姫たちと同じ部屋にということになりそうだったんだけど、流石に狭いんじゃないかという母さんの提案で彼女に一部屋与えられた。
そんなわけで彼女もよく家に遊びに来ている。とは言ってもここ数日は、生徒会の活動が忙しかったようで、家に来ていなかったけど。
「いやぁ、それにしても優君の部屋はあまり変わってないねぇ」
「……ちょっと待て、姉さん。何してるの?」
俺は、ベットの下をのぞいたり本棚の奥の方をそわそわしながら見ている、姉さんに声をかけた。
「えーちょっと本を探してるの」
「明日香さん、何の本を探してるんですか?私でよければ探すの手伝いますよ」
「本当に!?ありがとう。えっとね」
「それ以上言うなよ?」
「えー駄目なの?優君も男の子なんだからあると思うんだけどなぁ」
「いや、持ってないからね」
そういった類の本は買ったことはない。そもそも、周りに美姫や天音といった美少女がいるのだからあまり必要性を見いだせない。それに彼女たちが俺の部屋に入り浸っているので、仮にそんなものを買おうものならすぐに見つかってしまうことだろう。
「何があるんですか?」
「優君何か隠し事でもしてるの?」
美姫と天音の二人が首をかしげて俺にそう聞いてきた。この二人、抱き着いてきたりする割にはこういったことに疎かったりする。
「お兄ちゃんはそんなもの持ってませんから。明日香お姉ちゃんもこれ以上、お兄ちゃんのこと揶揄わないでくださいね?」
「しょうがないなぁ。今はとりあえず、辞めてあげる」
何とか千春が話の流れを断ち切ってくれたおかげで、俺は二人に追及されなくて済んだ。




