#2:仮彼女
美姫ちゃん大暴走。(あれ、前回もだっけ?)
俺は一瞬何を言われているのかが理解できなかった。
「もう一度言ってくれないか?」
「天音ちゃんも彼女にしてあげてください」
俺の聞き間違えということは無いだろう。そして、彼女の目からも冗談ではないことがうかがえる。
「美姫はそれでいいのか?少なくとも俺は、美姫に他に彼氏ができるのは嫌だ」
「勿論私たちは作りませんよ……というか、作るつもりもないので」
「わ、私も。優君以外の彼氏は要らないもん」
天音はそう言うと頬に空気を吸い、プクゥと頬を膨らませた。告白を聞いてからか、より一層天音がかわいく見えてきた。今まで可愛いと思っていても、これほどではなかった。美姫と天音が二人とも俺の彼女……想像するだけで幸せだ。って、そうじゃない。
「ごめん。やっぱり俺は……」
「分かりました。それでは、一か月間、天音ちゃんは仮彼女になってもらいます」
「仮彼女……?」
聞いたことない言葉に天音が首を傾げた。
「難しいことは考えなくて構いませんよ。一か月の間、天音ちゃんは優也君が彼氏になったつもりで生活してください」
「はぁっ!?」
「でも、それって美姫ちゃんはどうするの?」
「私は普通に彼女として接しますよ」
「ちょと待てぃ!」
それじゃあ、その間周りの人から見たら彼女が二人いるみたいな状況になるってことか?それは流石に……
「一か月後、どうしたいかは優也君が決めてください」
「決める?」
「はい。天音ちゃんとも付き合うのもよし、天音ちゃんを振るのもまぁ……」
「自分が振られるっていう選択肢はないんだな」
「そうですね。優也君の気持ち的に私を振ることはないと思ったんですけど、違いましたか?」
「ち、違わねえよ」
自分で言ってて、恥ずかしくなってきた。その間天音はじっと俺の方を見てきた。そんなうるうるとした目で見られたら俺が悪いことをしているみたいだし。いや、考え方を変えれば俺が悪いことをしているってことになるのか?なんだか、よく分からなくなってきたぞ。
ただ、一度も経験せずに振るのは彼女たちに対して失礼にあたるのか……?複数の子と同時に付き合うほうが失礼にあたるはずだけど、彼女たちがそれでいいと言ってくれるのなら気にしなくていいのか?
「……一か月でいいんだな?」
「はい、構いませんよ」
「ホントに!?いいの?」
「ああ」
「ありがとう、優君。大好き」
「うわっ」
俺が仮彼女の件を受け入れると、天音が俺に思いっきり抱き着いてきた。彼女に対しては性格や身長の面から無意識に妹分のような感じがあった。しかし、こうして抱き着かれてみるといい匂いはするし、柔らかい感触がある。そして何より、可愛らしい顔で嬉しそうに笑っていてくれる。
「まぁこの調子だと一週間もたたないうちに、天音さんは本当の彼女になると思いますよ。だって既に結構天音ちゃんにメロメロですよね?」
「ほ、本当!?」
「う、うるさい」
「ええ、優也君の顔真っ赤になっていますよ」
「あっ、ホントだ。私のこと意識してくれてるんだ」
「そりゃあ、天音みたいなかわいい子に告白された上に抱き着かれて、意識しないほうがおかしいだろ!?」
「か、可愛い!?」
俺が流れで天音のことを可愛いと言うと、天音は滅茶苦茶嬉しそうな表情を浮かべ俺のことを見てくる。
「多分、優也君一週間も持ちませんよね?」
「う、うるさい」
「ふふん、優君をメロメロにして見せるねっ!」
そう言うと天音は、より一層俺に抱きつく力を強くしてきた。美姫の言う通り……いや、もしかしたら一週間も持たないかもしれない。俺はそんなことを考えながら、天音の頭を撫でてあげた。すると彼女は目を細めて、嬉しそうな表情を浮かべた。
「ふふふ、仲睦まじいですね。……ですけど、私と一緒に会社を経営していくなら二人だけで満足してもらっては困りますよ、優也君?」
――美姫がさらに彼女を増やそうとしていることなど、この時の俺は知る由もなかった。
※ヒロインは二人だけではありません。