#298:姉さんの卒業式
バレンタインから月日が流れて、三月になった。三月の始めの日といえば、うちの学校では卒業式がある。勿論、俺たちの一個上の生徒たちの卒業式だ。
在校生は基本的には参加するというシステムなので、俺たちも会場に運んでいた。ただビデオに撮ることは俺たちはできないので、母さんに事前に頼んでおいた。
卒業生代表のあいさつは姉さんがやっていた。本人は卒業することに対して少し寂しさを覚えている感じだったけど、最後までしっかりと代表としての責務を果たしていた。
卒業式も終わり、姉さんは俺たちの部屋でゆっくりしていた。姉さんは俺に抱き着いてきた。
「優君、大好きだぞー!」
「ね、姉さん。家族と過ごさなくていいのか?」
「ん?折角優君と付き合えた高校生活を最後まで満喫しようかなって」
姉さんはニッコリと笑ってそう言った。
「そういえば姉さん、第二ボタン欲しいって人多かったよね?」
「あー。そうだねー。でも私は自分のものは大切に取っておく派だからなぁ。まぁ、優君が欲しいって言うならあげるけどね?」
姉さんは嬉しそうに語った。
「そういえば優君も告白されてなかった?」
「まぁ、数人だけどね」
実は三年生の女子の何人かに告白をされた。まぁすべて断ったんだけども。話したことない人だったし、これから高校を卒業する彼女たちとは接点もなくなってしまう。さらに今いる彼女たちが大切なのであまり時間を取れないだろうということも理由の一つだ。
「そういえば美姫ちゃんも流石だったよねー」
「本当に接点がなくなってしまう一個上の先輩が、美姫に絶えず告白していたからなぁ。俺も告白の対応をしていたとはいえ、気が気ではなかったからなぁ」
「ふふふ、そうですか」
いつの間にか部屋の扉は開いており、少しだけ嬉しそうな表情を浮かべた美姫がいた。
「でもまぁ、明日香さんほどではありませんよ」
「あ、あはは。流石に疲れたかなぁ」
「まぁ姉さんは今日の主役だったから」
「あ。皆何の話してるの?」
天音がひょこっとドアから顔を出して、そう言った。そして俺の部屋に入ってきた。
「美姫と姉さんが告白されてたって話」
「優君と早く帰りたかったのに……むぅ」
天音は少しだけ不機嫌そうにそう言った。美姫と姉さんほどではなかったけど、天音もそこそこ告白をされてしまっていた。本人は俺たちと合流したがっていたらしいんだけど、人が集まってたから中々出来なかったらしい。
「もう明日香さんも大学生……ですか」
「そうだねー早いね。でも私たちの関係は変わらず……ううん、前よりもずっと仲良く慣れて良かったよ。……ありがとね、美姫ちゃん」
「いえ」
姉さんの言葉に、美姫は微笑んでそう言った。
「さーて。そろそろ優君ともっとイチャイチャしないと」
「あー明日香ちゃんずるい!私も!」
「それじゃあ私も混ざるとしましょうか」
疲れからか、いつもよりも積極的に俺に抱きついてきた。そして皆疲れからかそのまま眠ってしまい、その現場を目撃した千春がこっそり布団をかけてくれたらしい。彼女いわく、眠っているみんなの表情はスッキリとしていて幸せそうだったとのことだった。




