#283:美姫と瑠璃と試食
俺たちは年越しそばと一緒に食べるための、天ぷらを準備していた。
「優也君、野菜をサツマイモを取ってきてください」
「分かった」
俺は美姫に頼まれて、サツマイモを取ってきた。彼女に言われたとおりに、俺は包丁を使ってサツマイモを切っていく。
「優君、優君、私は何をすればいい!?」
「うーん。俺は分からないから、美姫か瑠璃に聞いて」
「えーと、ここは大丈夫ですね。瑠璃さん何か天音ちゃんにしてほしいことありますか?」
「えっと。天音さんは茜さんと合流して、作業をしてほしいわね」
「うん、分かった」
瑠璃にそう言われた天音は元気よくそう言うと、食堂の方へと向かった。どうやら茜たちは新年に向けた準備をしているらしい。美姫の家では新年のお祝いも盛大に行うので、その準備をしているらしい。
最も、執事さんやメイドさんたちも準備はするんだけど、俺たちだけの新年のパーティを準備しているらしい。
「優也君、どうですか?」
「まぁ、こんなものか?」
「良いと思います」
「ええ。随分と上達したわね」
夏休みが明けてから、俺は美姫に料理を教わった。魅力的な彼女がたくさんいる中で、俺も彼女たちに少しでも釣り合う様になりたい。そう思って美姫に料理を学んでいたのだ。とは言っても美姫や瑠璃の様に、本格的なものを作ったりはまだまだ出来ないけど、簡単なものなら出来るようになった。
まぁ、今でも美姫と一緒に料理をするときは手伝いをするくらいだけどね。
「いい感じに出来たかな?」
「そうですね」
俺は揚がった天ぷらを見てそう言った。
「一つ味見をしてみましょうか」
そう言うと美姫は、サツマイモの天ぷらを箸でつまんで、息を吹きかけて覚ました。そして俺の口元まで運んだ。
「はい。優也君、あーんです」
「な!?ななな」
俺に食べさせようとしてくる美姫の横で、瑠璃が顔を真っ赤にしていた。
「うん、美味しいと思うよ」
「わ。私のも食べてほしいわ」
「わ、分かった」
俺は恥ずかしそうにそう言う瑠璃からも、一つ天ぷらを食べさせてもらった。もう一個と進めてくる二人だけど、試食だから今はこれくらいにしてと言って断った。
「うわぁ。おそばがたくさんあるよ!」
「そうだな」
「ふふっ。今年は人数も多いですから、多めに用意しておきました」
天音は目を輝かせてそう言った。
「いやーごめんね。手伝い何もできなくって」
「明日香さんは気にしなくて大丈夫ですよ。それよりもお勉強、頑張ってくださいね」
「勿論だよ。こんなに美人な後輩幼馴染に応援されて、サボるわけにはいかないからね」
姉さんは笑顔を浮かべてそう言った。
「そういえばこの天ぷらって先輩が調理したんですか?」
「いやいや。俺は材料を切っただけだな」
「なるほど……でも先輩が料理したことには変わりないんですよね?」
「ま、まぁ」
茜の言葉に何故か皆、キリっとした表情になった。そして一斉に天ぷらへと視線を向けた。あっ、そういえば前にもこんなことあったっけか。
皆ソバも食べていたけど、天ぷらは凄い勢いで減っていったらしい。一応美姫が多めに作っていたので、五分くらいでなくなるってことは無かったけど、それでもソバの量を考えるとすぐに無くなってしまった。
まぁ、美味しいと言って食べてくれたなら……嬉しいかな?




