#27:モヤモヤする気持ち
胸の高鳴りを感じるのは天音だけではないようで……?
「優君、どうかな?」
天音は俺の頭を膝の上に乗せると、恐る恐るといった感じで俺にそう聞いてきた。
「気持ちいよ。ありがとな、天音」
「うん!どういたしまして」
俺のことを不安そうに見ていた彼女の表情が、向日葵が咲いたかのように明るい笑顔へと変わった。天音は美姫に何かを囁かれると、先ほどの美姫と同様に俺の頭を優しく撫で始めた。天音の顔のすぐ隣から、顔を出して微笑むように見守っている美姫を見るに、彼女の入れ知恵だろう。
天音の優しな手つきに癒される。ただ、これは多分このままだと眠ってしまいそうな勢いだ。流石に帰ってきて早々寝たいわけではないので、俺は何とか膝枕を辞めてもらった。
「お兄ちゃん、私の番は?」
「悪い、後でにしてくれ」
「制服のままだと、しわがついちゃうので着替えてきますね」
「あ、私も着替えてくるね」
天音と美姫はそう言うと、部屋から出て行った。俺と千春のいる二階は、空き部屋が二部屋ある。そのうちの一つを美姫と天音が共同で使用している。というのも、二人がよく来るので折角ならということで母さんが使ってもいいと言ったのだ。
二人の部屋を前にも見せてもらったが、クローゼットやテーブル、少し大きめな本棚等どこにでもありそうなものだった。二人は結構な頻度で家に泊まるので、美姫が家具を揃えたのだ。ちなみに、メイド服はここには置いていなかったらしいんだけど、この間の罰ゲーム以降この部屋に置くことに決めたらしい。
ちなみにこの部屋にはベットもない。美姫曰く家に泊りに来ているのに、俺と一緒に寝れないんじゃ意味がないそうです。
まぁ、確かに家隣だからな。一緒に寝ないのであれば、寝るときだけ家に戻ればいいと言えるだろう。本来はまぁ俺が同性であればの話なんだけど、二人にとってそんなことは些細なことらしい。
「私もお兄ちゃんと同じ高校に行きたいなぁ」
「へぇ、何でだ?」
「そりゃあ、お兄ちゃんと放課後デート楽しみたいし」
「そ、そうか。でも、俺と一緒に居られるのって一年間しかないぞ?」
「そうだね。でも、まぁそれでも一緒にいたいから」
「まぁ、千春の実力なら余裕だろ」
「うん。褒めてね、お兄ちゃん」
千春はそう言うと、俺に甘えるようにして抱き着いてきた。こんなに可愛くて、いい性格で頭のいい少女が俺の妹なのだ。俺?俺は別にカッコよくもなければ頭も良くないし……性格はどうなのか分からないけど。
時々こんな腑抜けなお兄ちゃんでごめんと言いたい。ただ、そんな俺のことを好いてくれる千春には感謝でしかない。他の家庭では、この位の年頃になると異性の兄弟とはめっきり会話をしなくなってしまうこともあるようだが、もし千春がそうなったら俺は生きていける自信がない。
まぁ、それは冗談だが一週間ぐらいへこむ自信はある。割と本気で。俺がそんなことを考えていると俺のことを覗き込むようにして首をかしげている千春がいた。うん、まじ可愛い。美姫と天音とはまた違った可愛さがある。
「お兄ちゃん、どうかしたの?」
「いや、今日も千春は可愛いなと思っただけだ」
「ほ、本当に!?」
「ああ。お兄ちゃんは嘘つかないよ」
「そっか、今日も可愛い……えへへ、ありがと」
「お、おう」
俺が可愛いと言うと、千春は照れくさそうにありがとうと言った。こんなに可愛い妹が誰かのお嫁に行くと言ったら全力で止めに入ってしまう自信がある。俺のことが好きと言っているから、しばらくはその心配はないと思うんだけど。あー千春が誰かのお嫁になると考えただけでもモヤモヤしてきた。そういえば、これが天音だとしても俺はモヤモヤするような気がする。俺は天音のことが恐らく異性として好きになってしまっている。もしモヤモヤするという感情が恋をしているということなのであれば
――俺は実の妹のことも異性として好きなのだろうか?




