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#268:冬休みの始まり

「いやったー!優君、冬休みだよ、冬休み」


 帰りのホームルームが終わり、教室から誰もいなくなると、天音はそう叫んだ。加賀美先生は苦笑いを浮かべながら、俺たちのもとに近づいてきた。


「ふふふ、皆お疲れ様」

「加賀美先生、荷物は届いていました」

「うん、それならよかった」


 一応冬休み中も同好会として活動はすることになっている。その一環として、いやむしろメインとして皆でお泊り会をする予定だ。うちの学校は冬休みが始まるのが少し早く、12月の20日くらいに終業式を迎える。




「ふぅ。お仕事終わったわー」

「先生は休み期間中はお仕事はないんですか?」

「いや、まぁあることはありますよ?何だけど大体終わらせてきちゃったから、今年はあと一回行くだけかなぁ」


 加賀美先生――美穂さんは褒めてと言わんばかりの表情を浮かべていた。一緒にいると時々ポンコツぶりを発揮する彼女だけど、仕事の出来はいいらしい。




 俺と美姫と天音と瑠璃、それから茜と美穂さんの六人は学校を出た。そしてそのままの足で美姫の家へと向かった。部屋に入ると早速天音が美姫のベッドにダイブした。


「疲れた~」

「天音は相変わらずだなぁ」

「え〜?優君もほら~」


 天音はそう言うと、俺の腕を引っ張ってベットへと引きずり込んだ。


「美姫さんのベッドであまり暴れないでほしいのだけれど。整理するのは私たちなのよ?」

「まぁまぁ、瑠璃さん。後で私が直しておきますから。それにああ見えて、お行儀よくゴロゴロしていますから、そんなに乱れることもないと思いますよ?」

「……少し含みがあったのは気のせいよね?」

「?はい。ただ仲良く寝ているだけです。私も混じってきますね」


 美姫はそう言うと、ベッドにダイブしてきた。




「元気マックスだよ!」


 しばらくベッドでダラダラした後、急に起きた天音が起き上がってそう言った。


「それは良かったです」


 美姫はそんな天音を見て、ニコニコと微笑みながら起き上がった。


「今年のクリスマスは梨沙たちは来ないんだよな?」

「はい。来たいと言っていたそうですけど、流石に受験だからと香音ちゃんに止められたみたいですね」


 梨沙は俺のことになると後先考えなくなるからなぁ。そんな彼女をコントロールしてくれる香音には感謝……あ、そういえばどうやって納得させたんだろう。俺が疑問を抱くと、美姫がそれを察したかのように答えた。


「受験が終わったら、優也君と同棲ができるから一杯甘えられると言われたらしいですね」

「あーそういうことか」


 多分受験が終わって三日間くらいは、ずっと梨沙の傍にいさせられるだろう。まぁ別に愛しい彼女のお願いであれば、可能な限り聞くつもりだ。流石に学生の範囲内を超えてしまう用であれば止めるつもりだ。


「さてと、この話はおしまいにしましょう」

「おお、そうだな」

「というか先生の部屋って用意してあるのか?」

「はい、客間ですよ。今日は優也君と二人きりで寝ていただこうと思っています」

「「えええええ!?」」


 俺と美穂さんが驚きの声を上げた。恋人ではない先生は別、あるいは部活として皆で寝る可能性は考えていたけど、俺と美穂さんが二人きりで寝ることになるとは思ってもみなかった。


 どうやら交代制で俺と寝るらしい。二人で一緒に寝る日もある。ちなみに24日は天音と、25日は美姫と寝ることになるらしい。クリスマスは争奪戦になったと、後に瑠璃が呆れたように教えてくれた。



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