#267:優也の手料理
「お邪魔しますの」
「お邪魔しますわ」
14:30を過ぎた頃、南園さんと北園さんの二人が遊びに来た。
「月田様。お久しぶりですのー!」
南園さんは俺を見つけると、早速抱きついてきた。二人とは一か月程度あっていない。
「久しぶり、南園さん」
「……月田さん?美乃梨って呼んでほしいですの」
「美乃梨?」
「はい……ですの!」
俺が南園さんのことを美乃梨と呼ぶと、彼女は嬉しそうな笑顔を見せた。北園さんも嬉しそうな表情を浮かべながら、美姫と話をしている。
「あ、そうそう。今日のご飯は私たちも結構作ったので、楽しみにしていてくださいね」
「え?月田様が作ったんですの?」
南園さんは目を輝かせながらそう言った。
「うん。ここで働いている人のほとんどが社員旅行に出かけているらしくてね、それで俺も朝から手伝いをしてたんだ。でもまぁ、俺はあんまり作ってないけどな」
「いえいえ。私は、月田さんの手料理が食べられれば何だっていいんですの!!いくらお金を積んでも食べますの」
「いや、別にお金を友達から取ったりはしないから」
俺は少し困ったようにそう言った。南園さんなら本当にお金を払ってしまいかねないので、一応言っておかないとな。別に作ってほしいと頼まれれば、普通に作るぐらいはするつもりだからな。ましてや今日みたいに遠方から来てくれる時は、一食分までとは行かなくても、単品くらいは用意するつもりだ。
「くぅ。毎日作ってほしいですの。神無月さん、渉さんをもらってもよろしいですの?」
「ふふふ、あげませんよ」
「……全く。少しは我慢してほしいですわ」
そんなことを言う南園さんに対して、北園さんは呆れたようにそう言った。
「というか、美乃梨。我慢するって言っていたような気がしますわ」
「気のせいですの」
南園さんはプイっと視線をそらしてそう言った。
「こちらの料理を月田さんが作ったんですの!?」
「いや、俺はそっちじゃなくてその隣の小さい奴だな」
「なるほど、こっちですの」
「あっ!?優君の料理は私が食べるんだから!」
美乃梨と天音はバチバチとさせながら、俺の作った料理を食べていた。俺の作った料理を真っ先に作ってもらえるのは嬉しいんだけど、美姫たちも一生懸命作っていたから食べてあげてほしいんだけどな。
「月田さん。私に、月田さんの作った料理を食べさせてほしいんですの」
「え?」
「あーずるい!私も、優君私も食べさせて!」
「わ、分かったから落ち着いて」
俺はそう言って二人のことを落ち着かせると、順番に食べさせてあげた。
「やはり、大好きな殿方に食べさせてもらうと、より一段と美味しく感じますの。小百合も食べさせてもらった方がいいですの」
「え?わ、私は遠慮しておくわ」
南園さんの言葉に、北園さんは困ったように返答をした。南園さんはそれに対して特段気にする様子もなく、今度は俺に食べさせようとしてきた。
梨沙がいたら更に大変なことになっていたんだろうな。
今度から俺が料理を作るときは、もう少し量を増やしたほうが良さそうだな。俺はそう心に誓うのだった。




