#262:仮装という名のコスプレパーティ
「さてと。ハロウィンと言えば、お菓子とかいたずらですけど何か忘れていませんか?」
美姫は俺たちにそう問いかけるように言った。一同は何を忘れているのかが分からないといった様子で、美姫のことを見た。
「仮装ですよ、仮装」
「あー。確かにそういった文化もあったわね」
美姫の言葉に、瑠璃は気の乗らなさそうな表情を浮かべて言った。
「仮装?ひょっとしてお化けの格好とかするの!?」
「それでも良いと思いますよ。種類があるので皆さん一緒に行きましょう。あ、優也君はここで待っていてください」
「あ、あの。私はコスプレはちょっと」
「分かりました。無理をさせるわけにはいかないので、亜里沙ちゃんもここで待っていてください。折角ですので、優也君と二人で親交を深めてみてはどうでしょうか?」
美姫はそう言い残すと、他のメンバーを連れて部屋から出て行った。部屋の中には俺と亜里沙だけとなった。
「あ、あの。月田先輩?」
「どうかしたか?」
亜里沙は恥ずかしそうに、しかしながら意を決したかのような表情を浮かべて俺のことを呼んだ。
「あ、あの私も仮装とかしたほうがいいんでしょうか?」
「へ?」
亜里沙は仮装が嫌だから断ったと思っていたので、まさか彼女の口からそんな言葉が出てくるとは思っていなかった。
「無理はしなくていいんだよ?」
「無理ではないんですけど……仮装とかしたことないので」
「初めての物に抵抗があるって感じかな?」
「そ、そんな感じです」
まぁ、仮装に抵抗を覚える人がいるのは無理もないとは思う。テレビとかで見るのって結構派手な衣装だったり、少しリアルだったりするからな。聞けば、亜里沙はハロウィンで仮装している人を昔テレビで見たことがあるらしく、それがあまりにリアルだったためか、仮装に対して少しの恐怖心を抱いているらしい。
「まぁ、大丈夫だと思うよ?」
「え?」
まぁ美姫なら多分仮装は、驚かす系では使ってこないだろう。
「お待たせしました優也君」
まず最初に俺たちの前に来たのは、美姫だった。真っ白な服に長い黒い髪、まるでテレビの中から出てきそうな妖怪の仮装をしているつもりなんだろうけど……
「あ、美姫さんですね」
「ああ」
「はい、美姫です。どうですか、優也君似合ってますか?」
「ああ。綺麗だよ」
「……っ。ありがとうございます、優也君」
俺が褒めると美姫は嬉しそうに言った。去年もそうだったんだけど、仮装といっても美姫たちがやるのはコスプレだ。若干、妖怪とかのハロウィン要素を絡めてはいるものの、基本的には可愛らしいものを選定してくる。
「優君。お化けだぞ~」
天音は頭に三角の白い布を着けている。こちらも美姫同様、白い服を着ているがこちらのモチーフはお化けのようだ。あの漫画とかでよく見る、足のない可愛らしいタイプのお化けだ。今回はそれが擬人化したらという設定らしい。
「東条先輩、可愛いですね」
「ああ。天音可愛いよ」
「ありがとう、優君」
ファッションショーのように一人ずつ入ってきた二人。そして次のメンバーも入ってきたんだけど、その格好を見て俺は思わず鼻血を出した。
「つ、月田先輩大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫だ」
「んっふふー。優くぅん。お姉さんと良いことしなぁい?たぁっぷりと可愛がってあ•げ• る」
姉さんはサキュバスの衣装を身にまとっていた。何でこんなものが美姫の家にあるんだ!?俺はチラッと美姫のことを見た。すると彼女は俺と目を合わせてニコニコとしてきた。そして口パクで俺に何かを伝えてきた。
――わ た し も 着 ま し ょ う か?
そう表現しているように見えた。姉さんだけでも破壊力がすごいのに、美姫が着たら俺の体は持たない。俺は全力で横に首を振ったのだった。




