#260:トリック&トリート
そして迎えたハロウィン当日、午前中には加賀美先生――美穂さんと姉さんも合流した。
「優君。ぎゅー」
「うわ!?姉さん」
姉さんは来て早々、俺に抱きついてきた。彼女は受験勉強で疲れているということもあってか、いつもよりスキンシップが激しい気がする。俺はそんな彼女をやさしく受け入れる。今日は姉さんのそばにいてあげよう。今後受験で、もっともっと忙しくなってくるだろうからな。
「さてと、美穂さんも来て全員揃ったことですし……そろそろ始めましょうか」
皆が客間に集合した後、美姫はそう言った。そして皆はじっと俺のことを見つめてきた。
「え?」
「優君!トリック&トリート。お菓子をくれてもいたずらするぞー!」
「はいはい、お菓子な……って、おい!?」
俺は美姫に事前に言われていたので、お菓子を準備していた。天音がトリックと言ったのでお菓子をくれなきゃいたずらするぞと言うのかと思って、お菓子を差し出そうとしてしまっていた。
トリック&トリートって欲張りだな。そういえば確かに、そんなことを言っていたような気がするけど、本当に言うとは思ってなかった。とりあえずお菓子を欲しそうにしていたので、彼女にお菓子をあげた。すると天音はお菓子を受け取ったんだけど、何を思ったのか俺にお菓子を返した。
「え?」
「トリートって言ったでしょ?私は優君に食べさせてもらうんだ」
天音はそう言うと、じっと俺のことを見つめてきた。周りからの圧力に負けて、俺は彼女にお菓子を食べさせてあげた。天音が美味しそうに食べるので微笑ましい気持ちになっていると、姉さんが俺の前に移動してきた。
「さて、優君。今度は私の番だね。トリック&トリート。お菓子で君の心にいたずらしちゃうよ」
姉さんは少しキザな調子でそう言った。俺がお菓子を選んでいると、姉さんにお菓子を指定された。俺は棒にチョコのかかっているお菓子を取った。姉さんはそれを俺から受け取ると先っぽを口にくわえていた。
そしてそのまま上目遣いをしながらじっと俺のことを見つめてきた。これは、俺が反対側から食べろということなんだろう。前にもこんなことをやったような気がするけど、まぁいいか。
姉さんとの距離が近づいていた。姉さんは俺のことを見ながらも徐々にお菓子を食べ進めていた。視界の端で亜里沙と美穂さんが、ソワソワした様子で俺たちのことを見つめており、なんだかとっても恥ずかしくなってきた。
そんなことを考えていると、いつの間にか姉さんの顔が目の前まで来ていた。そして次の瞬間、彼女の唇が俺の唇に当たった。その瞬間、姉さんは逃がすものかと言わんばかりに、腕を俺の腰に回してきた。しばらく俺は姉さんとキスを続けた。
「ふぅ。どうだったかな、優君?」
「え?」
「私とのキスだよ。他の娘とはしているみたいだけど、私とは最近ご無沙汰だったからね。ちなみに私は最高だったよ。愛しの弟彼氏が、私のことを一生懸命求めてくれたからね」
姉さんは満足といった様子でそう言うと、俺から離れた。
「それじゃあ、次は私ね」
次はどうやら瑠璃の番らしい。彼女は俺からお菓子を受け取ると、俺の隣に座った。そして肩を俺の方に寄せてきた。
「ほら、月田君。一緒に食べるわよ」
「う、うん」
どうやら瑠璃は、肩を密着させてお菓子を分け合って食べることで、俺のことをドキドキさせようとしているらしい。正直いたずらではない気がするけど、幸せな気持ちになれたし、少し恥ずかしかったからまぁ……いいのだろうか?




