#250:先生は名前呼びしてほしい
「え。えっと今日はどうする……のかな?」
「特に予定は決めてなかったよね優君?」
天音は俺の方を見ると、そう言った。
「そ、そんな感じなの?」
「まぁ、そうですね。一人でいるよりも、三人でいることに慣れてしまいましたから」
疑問を浮かべている先生の言葉に、美姫が答えた。
「美姫ちゃん寂し狩りだもんねー」
「……そうですね。優也君たちと出会う前の私ならともかく、今の私の生活に二人がいないなんて考えられませんから」
天音は美姫のことをからかう様に言った。すると美姫は、クスッと微笑みながら言った。美姫の真っすぐな言葉に、俺は少し恥ずかしくなってしまった。天音を見ると彼女も俺と同じ様子だった。
「やっぱり三人とも理想の幼馴染って感じなのかな?」
「まぁ、そうですね。俺は二人が、それから姉さんが幼馴染でいてくれて良かったと思ってますよ」
「私も優君が幼馴染でいてくれてよかったよ」
「天音ちゃん。私はどうなんですか?」
天音の言葉に対して、美姫が焦ったように問いかけていた。
「え?勿論、美姫ちゃんも幼馴染でいてくれて嬉しいよ」
「天音ちゃん。私は嬉しいですー」
美姫はそう言うと、天音に抱きついた。天音は少し苦しそうにしながらも、美姫の頭を撫でてあげていた。そんな二人の様子を微笑みながら加賀美先生は見守っていた。しかし、ふと何かを思い出したような表情を浮かべた。
「そういえば、月田君の言っていた姉さんって?」
「ああ。姉さんは従姉なんですけど、朝倉 明日香って言って生徒会長です。真面目で責任感があって、俺たちのことを見守ってくれる人です」
「あ。あの娘ね。何回かしか話したことはないけど、いい娘だよね」
先生はうんうんと頷きながら言った。そしてはっとしたような表情を俺のことを見てきた。
「まさか、朝倉さんとも!?」
「え?」
「その。朝倉さんも月田君の彼女なのかなーって」
「あ、そうですよ?」
俺が答えるよりも先に、美姫が先生の質問に答えてしまった。
「優也君モテますからね。困ったことに」
「そうか?美姫と天音の方がモテるだろ」
「そうでもないと思いますよ?」
美姫は俺の言葉に対して、ふざけた様子もなくそう言った。確かに、前も少しそんなことを言っていた気がするな。
「まぁ、月田君はカッコイイと思うし、優しいからモテてもおかしくないと思うよ?」
「そ。それは……ありがとうございます。加賀美先生」
大人である加賀美先生に言われて、少し恥ずかしくなった。加賀美先生は少しムッとした表情を浮かべた。
「今は学校じゃないんだから、美穂って呼んでくれてもいいのに」
「いやいやいや、難易度高くないですか!?」
「うん、分かった美穂ちゃん」
いやいやいや、天音さん。その呼び方に順応するのは早すぎないか?
「それでは、学校以外の時は美穂さんとお呼びしますね。私のことは美姫でいいですよ」
「う、うん。美姫ちゃん……?」
どうやら美姫もそう呼ぶらしい。同性だとハードルは少し低いのかもしれない。というか先生のことを下の名前で基本的に呼ぼうと思ったことがないからなぁ。
「優也……君?美穂って呼んで」
「は、はい。美穂さん」
「うん。……えへへ」
俺の言葉に先生は、嬉しそうな表情を浮かべた。




