#241:みんなで夕食
最後の晩餐ってサブタイトルつけようか迷ってました。
「お兄さん。あーんです!」
「あ、あーん」
皆で美姫の家に寄り、夕ご飯を準備してもらった。そして俺たちの前に夕ご飯が並ぶと、梨沙は俺に食べさせようとしてきた。いつもなら大体美姫と天音が俺の両隣に座ることが多いんだけど、今日は梨沙と香音が両隣に座っていた。
南園さんも隣に座りたいとごねていたんだけど、中々会うことのできない年下彼女二人組を優先したというわけだ。
「美味しいですか、お兄さん?」
「ああ、ありがとな梨沙」
俺は梨沙にそう言うと、彼女の頭を撫でてあげた。すると彼女は目を細めて、嬉しそうにする。俺の彼女たちの中でも、梨沙は俺への愛が表に出やすい。夏休みに付き合い始めたばかりだけど、近くに住んでいるわけでもないので頻繁に会うことができない。加えて、久しぶりに再会した学園祭でも、一定以上の距離を取らなければならなかったので、彼女とつぃては寂しかったのだろう。
「お兄様。私からもどうぞ。はい、あーん」
「あれ、天音にはやらないのか?」
香音も梨沙と同じように、俺に食べさせようとしてきた。香音は俺のことが大好きなのと同じくらい、天音のことも好きだと言っていた。こういったことは、先に天音に対してやりそうだと思っていたんだけど。
「あ、もうお姉様には食べてもらいましたよ」
「うん。香音ちゃんに食べさせてもらったのはすっごく美味しかったよ。優君も食べさせてもらいなよ?」
天音なら恥ずかしいとか言って食べさせてもらうのを拒否するんじゃないかと思っていたけど、意外だった。食べ始めてほとんど時間が経っていないのに、既に食べさせてもらっている。つまり抵抗することなく、受け入れていることになる。前は少し香音に対して、困惑した様子を見せていたんだけど。
俺は香音に食べさせてもらいながらそんなことを考えていた。後で聞いた話なんだが、天音もどうやら俺と同じことを考えていたらしい。二週間ぶりくらいにあったので、彼女のお願いをできるだけ聞いてあげたいらしい。ちなみに、香音の代わりに次期当主になってほしいという願いは拒否していたけど。
「そろそろお別れの時間ですね……お兄様」
「もっと一緒にいたかったです、お兄さん」
香音と梨沙は悲しそうにそう言った。
「月田さん。いつまでもお慕い申しておりますのー。私のこと忘れないでほしいですのー」
「美乃梨ほどキャラの濃い人物を忘れるとは思えませんわ」
南園さんは号泣しており、北園さんはそんな彼女を見て呆れていた。南園さんと北園さん、梨沙と香音はそれぞれ一緒に帰るとのことだった。
「お姉様。またお会いしとうございますわ」
「ふふっ。次会う時までには、優也君のこと考えておいてくださいね」
「そうですわね。おいおい連絡を交わしながら、月田様のことは知っていくつもりですわ。友達として付き合うにしろ、恋人として付き合うにしろ……まぁ、気長に待っていてほしいですわ」
「分かりました」
二人は微笑みあいながら、そんなことを言っていた。俺の知らない所で、取引のような雰囲気で決められている。しかも北園さんのセリフって、恋人にしようと決めたら俺は逃れられないみたいな雰囲気が漂っているのは気のせいだろうか。
「それでは私たちは行きますね。お姉様、お兄様、美姫お姉様、それでは失礼します」
「お兄さん。またお会いましょう」
「美乃梨、私たちも出発しますわ」
「あっ、了解しましたの。月田さん、ではまた」
四人はそう言うと、二人ずつ迎えの車に乗っていた。




