#22:寄り道
……寄り道ですか。
「はぁ、今日も疲れたね」
「お疲れさまです、天音ちゃん」
「あはは、本当に疲れたよ。あ、そうだ優君」
「ん、どうかした?」
突然何かを思い出したかの様な表情を浮かべていた。
「折角だからこの後ゲームセンター行かない?」
「ゲームセンター?まぁ、偶にはいいか。美姫はどう思う?」
「ええ、構いませんよ。しばらく行っていませんでしたしね」
「それじゃあ、決定!」
天音がそう言うと、渡会が俺たちの間に入り込んできた。
「少し待ちなさい。学校帰りに寄り道何て良くないと思うのだけれど。しかもゲームセンターだなんて。ガラの悪い人に絡まれたらどうするつもりなのよ」
「ゲームセンターをどんなとこだと思っているんだ?」
俺が苦笑いしながらそう言った。ゲームセンターといってもそこそこ結構広い場所だし、子供とかも結構いてにぎわっているところだ。というか、最近そんな人たちをそもそもこの近辺で見かけないんだけどなぁ。
「それ賛成です先輩!私も行きたいです」
「なっ!?貴方いつの間に」
いつの間にか小泉が俺たちの近くにいて、そう言った。どうやら先ほどまでの会話はすべて聞いていたらしい。誰一人として俺たちは気づかなかったけど。
「貴方が行くならなおさら許可できないわね。ただ駄目って言っても行くでしょうし仕方ないから私も監視として行かせてもらうわ」
「とか言っちゃって~本当は先輩と一緒に遊びに行きたいけど、今まで誘えなかっただけなんじゃないですか?」
「は、はぁ!?そんなわけないじゃない」
出会ってそうそう喧嘩してるよこいつら。真面目な性格の渡会と、緩い性格の小泉は本当に相性が悪いんだろうな。彼女たちを連れて行ったら厄介なことになりそうだし、ここはそそくさと向かうことにするか。
俺はそっと美姫と天音の手をつかみ、その場所から出ようとした。すると突然両方の腕をつかまれた。
「先輩、何で先に行こうとしているんですか?こんなに可愛い後輩を置いていくなんて考えていませんよね?」
「私をおいていくなんて、一体何を仕出かそうとしているのかしら?こっそり夜遊びでもしようとしているのかしら?」
二人の目がマジだ。ここで、もう一度置いていこうとしたら大変なことになってしまうだろう。仕方ないか。
「分かった。けど、喧嘩はするなよ」
「適度を守って、皆が遊んでいれば私からは何も言わないわよ」
「渡会先輩が、私と先輩の邪魔をしなければ私も文句はありません」
「貴方の場合は、学生としての自覚が足りないのよ」
「え~ちょっと何を言ってるのか分からないです」
「お前たち。あのなぁ……駄目だこりゃ」
「あはは、二人らしいね」
「とりあえず行きましょうか。余りにも喧嘩するようなら、私がまた説得しますね」
仕方ないかぁ。まぁあいつら前も美姫の謎の説得に応じていたし、まぁ大丈夫だろう。
「ほら、渡会も小泉も行くよ」
「は~い」
「分かったわ」
「着いたよ」
「うわぁーお。結構広い場所なんですね、先輩」
「それに子供も一杯いるところなのね」
渡会と小泉の二人は、ゲームセンターを見て驚いていた。
「子供のころから三人でよく来てたからな」
「そうなんですか?」
「へぇ。ということは貴方達って、実は学校から結構近いのかしら?」
「ん?ああ、そうだな。そもそも近いから、ここを志望したわけだし」
「将来のことを見据えて学校を選びなさいよ」
渡会は呆れたような目で俺のことを見てきた。
「別に勝手だろ」
「そうだけれど……でもまぁ、そのおかげで月田君と会えたことには感謝しているわ」
「渡会、今何か言ったか?」
「へ、な、何も言ってないわよ」
「そんなことよりも先輩。早速遊びましょう」
「あ、ちょい待てよ。引っ張るなって」
「あ、こら待ちなさい!」
俺は小泉に手を引かれて急かされるようにして店の奥へと入った。
「青春していますね」
「そうだね。あの二人って」
「ほぼほぼそうだとは思いますよ」
「そうなんだ。頑張れ、二人とも」
そんな俺たちのことを、美姫と天音が微笑むようにして見守っていたことをこの時の俺たち三人は気づくことはなかった。




