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#212:美乃梨の過去最高の夏休み

リアルも落ち着いたので、投稿しました。

今後の投稿ペースについては未定ですが、以前までのようにできれば毎日投稿していけたらとは思っています。


 突然のことに俺は、いや俺たちは驚いていた。


「そうは言っても、明日にはご両親が戻ってくるんだろう?」

「それはそうですけど、嫌ですのー」


 南園さんは喚きながらそう言った。分かったからと言いながら、北園さんが南園さんと俺を離した。しかし、彼女もあまり元気そうな様子ではなく、落ち込んでいるように見えた。


「ふふふ、やっぱりお別れが寂しいんだね?」


 姉さんが二人をあやす様にそう言った。すると南園さんは目に涙を浮かべながらも、頷いた。


「月田さんともっと一緒に過ごしたかったですのー」

「お、俺?」

「私も、神無月様と一緒に過ごしたかったですわ」


 北園さんの言いたいことは分かるんだけど、南園さんはもっと俺と遊びたかったのか。二人はこの間のパーティで美姫と友達になったから招待されたって話だったけど。まぁ、そう言ってもらえることは嬉しいことだけど。


「その気持ちわかりますよ。私もお兄さんともっと一緒にいたかったです」


 梨沙が南園さんの手を取って、うんうんと頷きながら言った。そういえば梨沙も家に戻りたくないとごねていたからな。高校はこっちに来て、家か美姫の家に居候するつもりらしいけど。

 とはいえ連休にでもなればすぐに彼女はやってくるだろう。受験前で大丈夫なのかと問いたいけど、梨沙の成績なら家の高校に入るのは余裕らしい。


 案の定梨沙は、連休になったらまた来ればいいとか、俺の写真を一枚上げるとかそんなことを言っていた。


「クスッ、そうですの。こんなところで泣いて何ていられませんの」


 南園さんは涙を手でこすると、笑顔を浮かべて俺の方を見た。


「月田さん。待っていてほしいですの。お料理も、家事も、お勉強だって頑張って。立派に花嫁修業をこなしてきますの。だから、待っていてほしいですの!」

「へ?花嫁修業?」


 突然花嫁修業という言葉が出てきて呆けている俺を前に、彼女は突然俺の頬にキスをしてきた。


「え、えっと」


 俺が驚いていると、彼女は目線をそらした。


「返事は全然先でいいですの!私が立派に花嫁修業をこなしてからにしてほしいですの」


 そう言う南園さんは頬を真っ赤に染めていた。




「一緒のお部屋、ドキドキしますの」

「わ、私も一緒の部屋何ですわね」


 最終日の今日、南園さんと北園さんは俺と一緒の部屋で寝ることになった。付き合ってない男女が寝るなんてといつものごとく言ったんだけど、南園さんに目を潤わせながらお願いされて、北園さんも監視という名目で同じ部屋で寝ることになったのだ。


「いいじゃないですの。小百合だって、月田さんのこと好きではないですの?」

「唐突ですわね。まぁ、分からないという答えが正しいですわ」


 南園さんに急かされるようにして、北園さんは俺のことを見ながらそう言った。


「そ、そうか」

「けれど。一番気の置いている異性という面では貴方以上の方は過去いませんわ」

「え?」

「だから、そうですわね。次会った時にもう少しカッコよくなっていたら、考えますわ」


 北園さんはそう言うと、プイっと目線を背けてしまった。そんな彼女を見て南園さんはクスッと笑った。


「まぁ、美乃梨は結構月田さんのことが好きってことですの」

「ちょっ、美乃梨!?私はそんなこと言っていませんわ」

「ふふふ。そろそろ寝る時間ですのー。えいっ、ですの」


 南園さんは北園さんから逃げるようにして、俺に抱き着いてきた。その衝撃で俺は布団の上に倒れた。


「ふふふ、楽しいですの」

「美乃梨……まぁ、今日くらいは目をつむりますわ」


 こうして一人の少女――南園 美乃梨の過去最高に楽しかった夏休みは終わりを迎えるのだった。


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