#209:お昼ご飯
お店を一時間ほど見て回った後、俺たちは再び大通りを歩いていた。島田さんはその間ずっとご機嫌な様子だった。何でも、島田さんは葵君にシュシュをプレゼントしてもらったらしく、それでご機嫌なんだとか。
一人でルンルンと歩く島田さんの後ろを歩く俺たち三人。
「葵が買ってあげたの?」
「うん。お世話になってるから、何か買ってあげようかなって思って。それに島田さんがつけたら可愛いだろうなって思ったから」
葵は恥ずかしそうにしながらそう言った。うん、葵の意思で買ったというなら問題はないだろう。葵は恥ずかしくなったのか、小走りで島田さんの隣まで移動した。
「ふふっ、随分と友達思いですね優也君は」
「そうか?」
「葵君が無理やり物を買わされてないか確かめていたんでしょう?」
「まぁ。あんまり心配はしてなかったけど、俺同様葵って友達少ないからさ。万が一があっても困るから、一応確認しただけだよ。でもまぁ、要らぬ心配だったけどな」
俺がそう言うと、美姫はクスッと笑って前にいる二人のことを見つめていた。
「そうですね。あの二人を見ていたら、何で付き合ってないんだって思うくらい仲がいいですし、心配はいらないと思いますよ」
「そうだな」
俺たちは前にいる二人のことを見ていると、突然島田さんが振り返った。
「ねーね。そろそろご飯食べない?」
「ええっ!?クレープ食べたばかりじゃない!?」
島田さんがお昼ご飯を食べようと言うと、葵はビックリしたようにそう言った。
「とは言っても、クレープ食べてからもう一時間以上経っているから良いんじゃないかなーって思って。そろそろ十二時になるからね」
「あっ、もうそんな時間なんだ。楽しくて、時間が経つのが早く感じます」
葵は腕時計を見て、驚いたようにそう言った。すると島田さんは彼に抱きついて嬉しそうにしていた。
「……何であれで付き合ってないんだろう」
「優也君がそれを言ってしまいますか?」
「うっ。まぁ、俺はあれが幼馴染だからって思ってたんだけど、この二人って昔知り合いだったってわけでもないから」
「まぁ、そう言われると……」
俺たちがそんな会話をしていると、島田さんが「何の話をしているの」と聞いてきた。二人が何で付き合っていないのかかという話をしていたなんて言えるわけもないので、何でもないと適当にごまかしておいた。
お昼は葵のことも考えて、手軽に食べれるものを食べようということになった結果、ファストフード店に行くことにした。俺たち三人はハンバーガー付きのセットを注文していたんだけど、葵はハンバーガーは頼まず、ポテトとドリンクだけを注文していた。
「んーおいしいっ!」
島田さんはハンバーガーを豪快に一口食べた。そして、口に含み終えるとそう言った。うん、俺もこの店のハンバーガーは久しぶりに食べたけどやっぱり美味しいな。チェーン店だから別にここでなくても食べられはするんだけど、夏休みに入ってからはあまり食べていなかった。
「ねーねー。ポテト食べさせてよ」
「え。う、うん」
葵は島田さんに押されるようにして、ポテトを掴んで彼女の口元まで運んで食べさせていた。
「初々しいですね」
「ああ。俺たちも周りから見たらあんな感じなのかな?」
「ふふっ。じゃあ、試してみましょうか。はい、あーんです」
どうやら美姫も逃してはくれないらしい。葵が島田さんと食べさせあいをお願いされているように、俺も美姫にお願いされた。最愛の彼女のお願いを断ることができるわけもなく、俺は首を縦に振った。




