#200:南園さんの決意
南園さん回です。
月田君は出てきません。
「小百合、少し相談がありますの」
私――南園 美乃梨は親友である北園 小百合を呼びだしましたの。普段から私たち二人はよく一緒にいるんですけれど、今日は相談があって呼びだしましたの。
「それで要件を話してほしいですわ」
小百合が少し急かすようにそう言ってきた。そう言われても話す心の準備が出来ていないんですの。私は小百合に少し待ってほしいとの旨を伝えましたの。そんな私の表情を察してか、彼女も真剣な表情で私が話すまで待ってくれていますの。
私は深呼吸をして、心の準備を整えましたの。
「えっと、先程からやけに胸がドキドキしますの」
「胸が?それは病気とかかもしれないので病院に言った方がいいと思いますわ」
「いえ、体は健康そのものなんですけど……その」
「その?」
また胸がドキドキする。彼のことを思い浮かべるだけで。
「月田さんを見ていると……いえ、彼のことを思い出すだけでも、胸がどきどきするんですの」
「なるほど。それは恋ですわ」
「や、やっぱりそうなんですの!?」
私は頬に両手で包み込むようにした。すると自身の顔が熱くなっているのを嫌でも感じさせられますの。
「これは目標達成ですの!」
テンションを上げてそう言う私に対して、小百合はため息を吐いた。
「それは良かったですわ……と言いたいけど、その気持ちはどうするつもりなんですわ?」
「え?」
呆れたように言う私に、彼女はやっぱりかという視線を感じ取れた。小百合が、何も考えていないお馬鹿を見ている様な視線を浴びせてきますの。
「自分の気持ちに蓋をするつもりなのかそれともアタックするつもりがあるのかという話ですわ」
「え、そ……それは」
小百合に言われて私はしばらく考え込みましたの。確かに私は今まで恋愛を見てみたいと思っていましたの。でも美姫さんたちの表情を見て徐々に恋愛を体験してみたくなり、そしてこの現状ですの。
「どうしたらいいか分からないんですの!」
「……はぁ、そんなことだろうと思いましたわ」
小百合が呆れたように、そう言いましたの。ぐぬぬ、何か私のことを見透かされているような気がして悔しいですの。
「まぁ。よりにもよって、何であんなにたくさんの彼女がいる月田様なのかは置いておいておきますわ」
「な。そ、それはいいじゃないですの?だって月田さんはとっても紳士的ですし、可愛らしいお顔をお持ちで、何というか理想の人だったんですの」
小百合の言葉についムッとした私は、少し感情をあらわにしながらそう言いましたの。すると小百合はクスクスと笑いだしましたの。
「な、何がおかしいんですの!?」
「いえ。そこまで言えるなら答えは決まっていると思いますわ」
小百合に言われてハッとしましたの。恋愛が好きだった自分が、今恋愛することが出来ているという点。一人の男性を共有しあっている女性たちの仲間入りを目指すというイレギュラーな恋愛シチュエーション。こんなの燃えざるを得ませんの。
そして何より、月田さんのカッコイイあの方のお傍で、皆さんと同じように愛してほしいですの。
「決まりのようですわね。まぁ、焦る必要はないと思いますわ。時間はまだたっぷりありますし、じっくりと距離を縮めていけば良いと思いますわ」
「ええ、そうしますの」
「まぁたくさん彼女はいますけど、月田様なら問題ないと思いますわ」
「ええ」
小百合もどうやら月田さんのことを認めてくれて要るっぽいですの。って、そういえば。私は気になったことを小百合に聞いてみることにしましたの。
「小百合は月田さんのことを好きにならないんですの?」
「素敵な人だとは思っていますわ。ただ恋愛感情は今のところはないですわ」
「今のところは……って所に引っかかりますの」
「そ、それは。何でもいいですわ。私のことは放っておいてほしいですわ」
恥ずかしそうにそう言う小百合に対して、私はからかうように問い詰めた。小百合が怒って、部屋から逃げるまで私のからかいは続きましたの。




