#19:渡会 瑠璃
新キャラです。このキャラまではプロローグの時には既に、名前等は決まっていました。
なので、おそらく次の新キャラは先になると思います。(まぁ、思いついたら出すかもしれないのでそこら辺は分かりません)
「おはようございます優也君」
「おはよー優君」
「二人とも、おはよう」
美姫が彼女に、天音が仮彼女になってから初めての平日だ。今日は、玄関で俺のことを出迎えてくれた。毎回毎回出迎えてもらうのは悪い気がするんだけど、彼女たちが好きでしていることだから気にしないでいいと言われた。天音はともかく、美姫の家は広すぎて流石に大変なのでありがたいと言えばありがたいんだけどね。
いつも通り、俺たちは三人で手をつないで登校している。三人で一緒にいるのが俺たちみたいになっているらしく、そこまで周りから気にされることもなくなった。意図的に少し早めに登校しているというのも勿論あるんだけどね。それこそ一年生の時は、そんなことを言われたこともあったんだけど気づいたころにはそのこと指摘してくる人は居なくなった。まぁ、美姫や天音目当てで俺にそう言ってくる人はいたけど。
まぁただ例外も存在する。
「あら、おはよう天音さん。美姫さん」
「おはようございます渡会さん」
「瑠璃ちゃんおっはよー」
――渡会 瑠璃。名前の通り、瑠璃色の綺麗なツインテールの少女だ。俺たちのクラスのクラス委員を務めている。美姫や天音と並んでそこそこの人気がある少女だ。
「貴方は相変わらず、二人も女の子を侍らせているのね」
「いや、別に侍らせてはねえよ!?むしろ、俺が色々苦労させられているっていうか」
「そうかもしれないわね」
「だろ?」
「まぁ、客観的に見たらそうは見えないけれどね」
慰めてからの叩き落とし。彼女は、何故か俺に対してだけ若干口が悪くなることがあるのだ。まぁどっかの後輩と違って揶揄うようなことはないんだけど、何か少し不思議な少女だ。ただ、俺が天音と美姫と一緒にいるといつも不機嫌そうな表情を浮かべて、少々の文句を言ってきたりもする。ただ、彼女も配慮はしてくれているみたいで人が少ない朝の時間にさらっと言うだけだ。こう言ったところを見るに、気遣っているようにも思える。
仮彼女というものが出来てしまっているから感覚が麻痺してしまっているが、高校二年生にもなって異性の幼馴染二人と手をつなぐことなんて普通はあり得ないからな。そこら辺を気遣って言ってくれているんだろう。もう、多分手遅れな予感しかしてないが。
「すみません少し飲み物を買ってきますね」
「あ、私も行く」
美姫と天音は飲み物を買いに行くと言って、教室から出て行ってしまった。そして、教室には渡会と俺しかいなくなってしまった。
「月田君、貴方は今の現状をどう思っているのかしら?」
「現状?」
「そうね。言い方を変えましょうか。ずっと三人でやっていけるつもりかしら?」
「……どういうことだ?」
「月田君がどちらかと結婚したとして、もう片方と以前までと同じ関係が築けると思っているの?恋人のような距離間だけれど」
「まぁ、難しいのは理解している。ただ、美姫も天音もそうするつもりだと思うよ」
「そう。まぁ、彼女たちなら出来るかもしれないけれど、貴方は二人のうちのどちらかと付き合うつもりなのかしら?」
「ん?……あー」
本当は美姫が彼女なんだけど、それを言うと天音の仮彼女のことも話さなきゃいけないし、美姫には口止めされてるからなぁ。
「いえ、答えなくて大丈夫よ。その反応で大体わかったから」
「そっか?」
「二人とは付き合うつもりはないということね。あんなにべたべたしててその気がないなんて彼女たちに何も思わないの?」
「いや、まぁ……」
何とも答えられねえ。一人は仮だが、二人とも付き合っているとは言えないしその時点であれだから、ここは黙って俺が悪いことにして受け入れておこう。
――そんなことを考えていた俺は気づかなかった。
「月田君が二人に気がないのなら……ふふふ、私にもチャンスがあるわね。今はまだ恥ずかしくて言えないけど、絶対告白して見せるわ」
小さな声で、覚悟を決めていた乙女に、このときの俺は気づくことはなかった。




