#198:南園さんと二人きり
「そういえば南園さんたちは、いつ帰るかって決めてるのか?」
別荘から帰ってきた翌日、朝食を食べ終わった後、リビングでのんびりしている南園さんを見かけた。俺は彼女に少し気になっていることを聞いてみた。
「え?ああ、夏休み期間中はここにいても良いと両親に言われているので、いくらでもいれますの!」
「そ、そうなんだ」
「神無月さんの家ならと許可をいただいていますし、課題とかも持ってきていますので、夏休みギリギリまでは滞在させていただきますの。ここなら私の学びたいことををたくさん学べますの」
南園さんは嬉しそうにそう言った。学びたいものって何だろうか。気になった俺は彼女に聞いてみることにした。すると南園さんはきょとんとした表情を浮かべた。
「決まっていますの!月田さんとその周りを取り巻くリアルの恋愛ですの!」
「あ、ああ」
俺は呆れたようにそう言った。南園さんが学びたい斧があると言っていたから、気になっていたが南園さんは変わっていないらしい。まぁ、そのほうが彼女らしいと言えばそうなんだけどね。
「月田さん、折角ですので二人きりで遊びませんの?」
「え?」
そんなことを考えていると南園さんが、突然二人で遊ばないかと提案してきた。う、うーんと……これはどうなんだろうか?彼女の家で、彼女以外の女子と二人きりで遊ぶという状況だ。まぁ、普通に考えてアウトなんだけど。美姫の場合は、特にとがめることはないというか場合によっては推進してくるからな。
とはいえ、折角皆でお泊りしているんだから、恋人たちとの時間を作ったほうがいいのではないかとも考えている。
「というか北園さんは何をしているんですか?」
「小百合なら今は美姫さんと一緒に、用事があるって言っていましたの」
「そして、幸いなことに梨沙さんと香音さんは財閥関係のお仕事、天音さんと千春さんと茜さんと瑠璃さんはショッピングに出かけておりますの。明日香さんはお勉強で忙しいですので、今暇なのは私たち二人きりということになりますの」
南園さんは嬉しそうに、ニコニコとほほ笑みながらそう言った。俺も天音たちとのショッピングに出かけようとしたんだけど、駄目と言われてしまった。どうやら今日は女子メンバーだけで出かけたいらしい。
「遊ぶって言っても何をするんだ?」
「確か月田さんの部屋があるんですの?」
「ああ、あるけど」
俺がそう言うと、南園さんはそこへ案内するように俺に迫ってきた。やけにテンションの高い彼女に連れられて、俺は部屋へと入る。
「あまり生活感はないんですのね」
「まぁな。基本ここに泊まるときは、美姫と一緒に寝ることを義務図けられているようなもんだったからな。というか家が隣だから、一緒に寝なかったらお泊りする意味がないからかな」
「それもそうですけど、単純に美姫さんが一緒に寝たいだけだと思いますの」
「まぁ、そっちが本命だろうな」
俺がそう言うと、南園さんは目を輝かせた。
「私もやってみたいですの!」
「は?」
思わず口から出てしまった。しかし南園さんは俺のそんな声に臆することなく、言葉をつづけた。
「ですから、幼馴染&恋人&一緒の布団でイチャイチャするシーンを再現してみたいんですの!」
「は、はぁ」
いつものやつか。……って、うん?再現?
「再現ってどういうことだ?」
「だって私以外に、いませんもの。明日香さんを連れてきてしてもらうわけにもいきませんもの」
姉さんは今頃部屋で必死に勉強しているだろうし、邪魔をするわけには行かないというのには賛成だ。
「でも、それって仮とはいえ俺と同じベッドで横になるってことになるぞ?」
「構いませんの」
「それに基本的に現実の恋愛を見たかったんじゃなかったっけ?自分が当事者になったら見れないような……」
「いえ、体験してみたくなったんですの!」
南園さんは目を輝かせながら俺にそう言ってきた。




