#18:メイド服な二人
前回の続きです。
「それでは、少し遅くなりましたが言いますよ天音ちゃん」
「えぇ、ホントに言うの?……は、恥ずかしいんだけど」
「ふふふ、諦めてください」
美姫は天音の方を向き、「せーの」と小さな声で言った。
「「お帰りなさい、ご主人様」」
美姫は笑顔で、天音は恥ずかしがりながらもそう言った。恐らく、ここまで事前に仕込まれたらしい。
「まぁ、恐らくは将来的には天音ちゃんはこれを着ることになると思うので、今のうちから慣れておかないとですね」
「え、私将来的に着るの!?」
「そうですね。仕事中も優也君と一緒にいたいなら、メイドさんになって優也君の身の回りの世話とかをしたほうがいいと思いますけど」
「あ、なるほど!そしたら優君にも褒めてもらえるし……愛してもらえるかも」
どうやら美姫は将来のことまで見据えていたらしい。本当かどうかわからないが、彼女が言うとやけに真実味を帯びてしまう。
「優君横になってください」
「横?何でだ」
「あ、天音ちゃんの膝の上にです」
「それって膝枕じゃ……」
「優君、私の膝の上にお願い」
美姫に言われ、天音に懇願されるがままに俺は天音の膝に頭を乗せた。彼女の体は凄く柔らかく、寝心地がよかった。さらに彼女は俺をあやすように優しく俺の頭をなでてくれた。
「ど、どうかな優君?き、気持ちいい?」
「うん、最高」
「ふふふ、良かったですね天音ちゃん」
「う、うん。優君に喜んでもらえてうれしい……勇気出してよかった」
「今なら、優也君も逃げられませんし、今ですよ天音ちゃん」
「い、今。は、恥ずかしいけど……うん、やってみる」
俺が天音の膝の上で頭をなで続けられて癒されている間、美姫と天音はそんな会話をしていた。そして天音は俺の方に再び視線を降ろすと、顔を固定させてそのまま近づけてキスをした。
以前よりも少し長めのキスだった。キスを終えて、慌てて顔を離した彼女の頬は桜色に染まっており、とても恥ずかしそうな様子だった。
「優君、好き。大好き」
「あ、天音」
「優君。私待ってるからね。常に優君の隣に美姫ちゃんがいたとしても、私もそのそばで優君を支えたいから」
天音はそう言うと、ニッコリと微笑んだ。その言葉と彼女の表情に、俺の心臓は美姫に告白した時と同じくらい高まっていたのだった。やばい、天音が滅茶苦茶可愛く見える。俺は、こんなことに気づいていなかったのか。告白されてから意識するようになったけど、これはやばいな。美姫に告白するまでは、視界が狭すぎてこんなにも魅力的な彼女に気づけていなかったらしい。
「優君、どうかしたの?」
「い、いや何でもない」
「優也君、ひょっとして照れちゃってませんか?」
美姫はそう言うと、俺の頬を指でツンツンと突いてきた。それを見た天音も真似をして反対側を指でツンツンと突いてきた。
「な、なんだよ」
「いえ。ふふふ、何でもありませんよ」
「いや、絶対何かあるでしょ?」
「何でもありませんよ。えいっ」
美姫はそう言うと、俺の体に抱き着いてきた。それを見た天音も対抗するように俺に抱き着いてきた。両腕に柔らかいものがあたり、いい匂いのする二人に抱き着かれて俺は滅茶苦茶ドキドキしていた。
「偶にはこうやってただただ抱き着くのも悪くないと思いませんか?」
「うん、楽しいし何よりも優君の熱が感じられて、幸せな気分になれるもん」
「ああ、まぁ確かに幸せな気分にはなれるよ」
「優也君どうですか?これが二人じゃなくて、皆の温もりなんです」
これが皆の温もり。そもそも二人じゃなきゃいけないって誰が決めたんだ。いや、勿論世間的にそうなのは知っているし、複数の女の子と付き合うのは世間的にあまり良いものとは言えない。ただ、そんなことは承知しているし気にするつもりもない、ただ俺は、彼女たちが与えてくれる幸せを受け取っているだけで、本当に彼女たちに返していけるんだろうか。彼女たちを幸せに出来るんだろうか。
――美姫たちによってこの時既に、俺が全く世間体を気にしなくなってしまっているのだがこの時の俺は全く気付いていなかった。
「あと、もう一息ですかね。天音ちゃんを受け入れてもらえれば後は簡単ですから」
もう少しで……というところで一旦天音ちゃんの猛攻はストップです。
次回は普通に学校行きます。茜ちゃん回か新キャラ回かどっちかになると思います。
まぁ美姫ちゃんの猛攻は止まりません。




