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#181:ドッジボール

「あ、いたいた……おーい優くーん!香音ちゃーん!」


 公園を出て、待ち合わせ場所へと戻ると、既に先についていた天音が俺たちを見つけて手を振りながら大声で俺たちのことを呼んだ。


「どうでしたか。香音ちゃん、楽しめましたか?」

「はい。とっても楽しい時間を過ごせました。ありがとうございます」

「それは良かったです」


 美姫に対して、嬉しそうにそう報告している香音。そんな彼女に対して、美姫は微笑んで見せた。


「さてと……まだ時間はたくさんありますけど、どうしますか優也君?」

「そうだなぁ……天音は何かしたいことあるか?」

「私?一杯食べたし、何処かで運動したいなって思うんだけど、どうかな?」


 確かに夏休みに入って、体育の授業もなくなったからか、外で運動する機会は減ってしまったように思える。


「とは言っても何処に遊びに行くんだ?スポーツ系統だったら、美姫の家で大体は出来るけど」

「それに人数が多い方が楽しいですからね。一度家に戻りましょうか」


 美姫に連れられて、俺たちは一度美姫の家に戻ることにした。




 何のスポーツをするか話し合った結果、ドッジボールをすることに決まった。皆でスポーツをするという話し合いの際に、露骨に瑠璃が嫌な表情を浮かべて、最終的にドッジボールならそれほど辛くないからという理由で、彼女も納得してくれた。姉さんは参加したがっていたが、勉強をしないといけないからという理由で渋々断っていた。


 クジでチーム分けをした結果、俺と美姫と香音と瑠璃の四人と、天音と千春と梨沙と茜の四人のチームに決まった。


 美姫と天音がじゃんけんをした結果、美姫が勝ったので俺たちからボールになった。審判は例によって、システムが自動で行っているらしい。


 試合は美姫がボールを保持した状態から、始まった。美姫が投げたボールは真っすぐ天音に飛んで行った。しかし、天音はそのボールをしっかりとキャッチした。


「ふふふ~美姫ちゃん。甘いよ?お返しだー」

「痛っ……何で私なのよ」


 天音がお返しだと言いながら投げたボールは、真っすぐに瑠璃の方向へと飛んでいった。彼女は美姫の方にボールが飛ぶものだと思っていたということもあってか不意を突かれてしまい、キャッチすることも避けることも出来ずに、そのままボールを落としてしまった。


 システムによって瑠璃のアウトが告げられて、彼女は外野へ移動した。瑠璃の落としたボールを拾い上げて、俺はすぐさまはしゃいでいる茜めがけて投げた。


「ふっふっふ。甘いですよ先輩?」


 彼女はボールの真正面から受け止めた。しかし、ボールは彼女の両腕の間から綺麗にストンと落ちてしまった。


「なっ!?」


 システムによって茜のアウトが告げられた。そこからは中々な盛り上がりを見せた。お互いがボールをキャッチしたり避けたりして、上手いことアウトにならないようにプレーをしていた。時々外野までボールが飛んでいくんだけど、外野組の二人が投げたボールはもれなくすべて相手に捕られていた。


 最終的には俺と美姫対天音の構図になり、俺の投げたボールが天音の足に当たって俺たちの勝ちになった。




「あー疲れた」

「カッコよかったですよ?優也君」


 ドッジボールを終えて、ベンチに腰かけて休憩していると後ろから声が聞こえた。振り返ると、水筒を持った美姫が立っていた。彼女は持っている水筒を一つ俺に手渡すと、俺の隣に腰かけた。


「そうか?美姫もカッコよかったと思うけど」

「ありがとうございます。でも私じゃ天音ちゃんをアウトにするのは難しかったと思いますよ?」

「そうかな?」

「はい。だから、カッコよかったですよ」


 美姫はそう言うと、ニッコリと微笑んだ。ドッジボールによる疲れか、あるいは彼女のそんな笑顔によるものなのかは分からないが、しばらくの間胸の鼓動が高鳴るのを感じた。


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