#171:姉さんの提案
結局、その夜は一緒の布団で眠った。
「さてと、月田君。……何をしようかしら?」
そして翌朝、隣で眠っていた瑠璃に起こされた……のだが、彼女は俺を起こすやそう言ってきた。
「はい?」
「いえ……その、私はこういう時余り何をしていいかわからないのよ。親の言うことに従って、ただただ勉強だけしてだけなのだから」
渡会がモジモジしながらそう言った。そんな彼女の反応を見て、少し申し訳なさがこみ上げてきた。
「あっ、そういえばそうだったっけ?」
「そうね。だから、個人的には未来の彼氏とイチャイチャしてるだけでも充分なのだけれど……それとあまり外には出たい気分ではないわね」
瑠璃はやはり外に出かけるのが苦手らしい。無理に彼女を外に連れ出そうとは思ってないし、俺もどちらかと言えばインドア派なので、部屋に一緒にいるのは賛成だ。そんなことを考えていると、可愛らしい音が鳴った。音のなる方を見ると、彼女は恥ずかしそうにお腹を抑えていた。
「と、とりあえずご飯を食べに行きましょう」
「そ、そうだね」
瑠璃に腕を引かれて、食堂へと向かった。
「あ、おはようございます。優也君、瑠璃さん」
「おはよう、美姫」
「おはよう、美姫さん」
「あ、優君おはよう!」
食堂に行くと、既に美姫と天音がいた。天音は俺たちを見るとブンブンと手をはねていた。
「美姫さん、天音さん……少し相談があるのだけれど」
「はい?場所を変えたほうがいいでしょうか?」
「いえ、このままで構わないわ。……えっと、その」
瑠璃は、今日俺と何をすればいいのか分からないと美姫と天音に相談していた。
「えー外に遊びに行った方が色々あって楽しいよ!」
「うーん。どちらかと言えば今日は家でのんびりした気分だから、それはまた今度にする予定よ」
「そうですね……家で優也君とデートするときは、とにかくイチャイチャしてますね」
「というか、のんびり過ごしてたら急にいちゃつき始めてデートが始まるって感じですよね」
千春が突然後ろから現れると、そう言った。
「そ、そうなのかしら?」
瑠璃はそう言うと、俺のことを見てきた。た、確かに美姫や天音と一緒に過ごしているときはお家デートって感じはあまりしていないな。普通に皆でゲームしたり、のんびりしたりすることが目的なことが多いからな。イチャイチャする時も、その目的の間にすることが多い気がする。
「まぁ、確かに一日中ずっとイチャイチャしていることは少ないかな」
「お兄ちゃんたちの場合は、無意識にイチャイチャしてるから……あんまり参考にならないと思うよ」
「そ、そうなのね」
「うん。あ、明日香お姉ちゃん」
千春が、ちょうど食堂に入ってきた姉さんを呼び止めた。千春は姉さんに、瑠璃に家でデートするのにおススメの方法を聞いた。
「う、うーん。そうだね。瑠璃ちゃんの趣味だっていう、本を一緒に読んでみたらどうかな?ただし、瑠璃ちゃんは優君の膝の上に座って、優君に読んでもらう……とかどうかな?」
姉さんは少し考えた後、名案とばかりに喋っていた。
「確かに、誰かに本を読んでもらったことはなかったわね」
瑠璃はそう言うと、期待するような表情で俺のことを見つめてきた。物欲しそうにする彼女の要求を断ることもできなかった俺は、半日彼女に本の読み聞かせをしていた。本は美姫の部屋にあるものを借りたんだけど、そこそこ難しくて瑠璃が頭を撫でたりして、読むのを応援してくれていた。




