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#169:渡会の両親の影響

「久しぶりね」

「あ、瑠璃ちゃんいらっしゃーい」

「今日から、また数日泊まることができるわ。……全く、人の行動を制限される身にもなってほしいのだけれど」


 再び渡会が、美姫の家に来た。今度は数泊泊まれるらしい。茜が泊まりに来た日は、渡会は家の都合で帰ってしまったからね。


「渡会の家も大変そうだね」

「ええ、そうね。何処かにこんな私をもらってくれる王子様が現れてくれるといいのだけれど」


 渡会はそう言うと、チラチラと俺のことを見てきた。


「え、えっと」

「ふふ。それは私の家でのゴタゴタが終わったらにするわね」

「何か協力できることがあったら言ってくれよ?まぁ、今渡会が何をしているかは分かんないけど」


 俺がそう言うと、渡会はニッコリとほほ笑みを見せた。


「ええ。その時は頼りにさせてもらうわ」

「ま、まぁ。大抵のことは美姫がすでに裏回ししてそうだけどな」

「何でそこで急に頼りなくなるのよ……さっきまでのカッコよさはどこに行ったのかしら?」

「え?何か言ったか?」

「何でもないわよ!」


 渡会がモゴモゴと何かを言っていたが、良く聞こえなかったので聞き返そうとすると、今度はそこそこの大きさの声で怒られた。




 俺たちは一日、宿題をすることにした。渡会は既に宿題をほとんど終えていたので別に遊んでもいいって言ったんだけど、俺たちが宿題をするならそれを見ると言っていた。


「瑠璃ちゃん、瑠璃ちゃんここってどうやるの?」

「ここは、この公式を使って、こう解けば簡単にできると思うけれど」

「あっ、ホントだ!ありがと、瑠璃ちゃん」

「ふふっ、どういたしまして」


 先ほどから、天音が分からないと言っていた宿題を瑠璃に教えておらっていた。本当は美姫に聞こうとしていたらしいんだけど、朝から美姫は用事があるらしく俺たちが起きた時には既にいなかった。


「ふふっ。何だか出来の悪い妹を持った気分になるわね」

「むぅー。優君。瑠璃ちゃんも私のこと妹扱いしてきたよー」

「あ、ごめんなさい。嫌味ではなくって……その、私は両親に厳しくしつけられてきたから、癒しというものがなくて……天音さんを見てると癒されるから」


 渡会は少し慌てるように弁明していた。普段の凛々しい彼女とは違って、あたふたしている様子は可愛らしい。


「瑠璃先輩。可愛いとこあるじゃないですか?勉強しかしてない、真面目でつまらない人だと思ってましたよ」

「あ、貴方ね」


 渡はは少し怒ったような様子で、茶々を入れた茜を睨んだ。しかし、少し経った後くすっと笑って見せた。


「ふふふ、やっぱり貴方たちといると楽しいわ。今まで生きてきた時間と同じくらいの幸せを、一日貴方たちと過ごしている時間だけで感じることができるのだから」

「あ。みなさんただいまです」


 すると部屋に外出を終えた美姫が戻ってきた。そして彼女の手には一枚の用紙が握られていた。


「ふふふ、成功しましたよ?これで今日から瑠璃ちゃんは、神無月家の養子です」

「そう。これで、すべて終わったのね」

「はい、そうですね。これも瑠璃さんが証拠を掴んでくださったおかげです」

「いえ、何もしてないわよ。家族が悪いことをしていたのが気に食わなかっただけなのだから」


 どうやら渡会の両親、特に父親が裏でいろいろと問題を起こしていたらしい。いくつもの要因があったが、使用人に対する暴言や暴力が一番大きいものだろうか。瑠璃の父親はまもなく、警察に身柄を確保されるだろう。渡会の母親はそれとは関わっていなかったものの、今渡会が育てられてきた環境を知れば立場が悪くなってしまうのは明白だ。


 そこで、渡会が美姫の家の養子になることで、渡会がこの件に関しては何も言わないという約束を取り付けたらしい。


 何はともあれ……これで渡会は自由の身になれたというわけだ。……結局、俺が直接的に助けてあげることはできなかったわけなんだけどね。

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