#16:お菓子を使ったゲーム
お菓子を使ったゲームです。
まぁ定番のあれですね。
「それにしても天音の部屋に来たのもいつぶりだろう」
「確かにねー。優君、私の部屋来ていいって言ってもなかなか来てくれないんだもん」
「まぁ、そうだなぁ。あの当時は美姫のことばかり考えてたから」
「ふふふ、そうなんですか?」
「……い、いや何でもない」
これは余り言うべきではなかったんだろうか。俺は恥ずかしさもあったので、さっきの発言を無かったことにしようとした。
「発言を無かったことにはできません。私のことばかり考えてくれたということは私にとって嬉しいことですから撤回しないでくださいね」
「美姫……分かったよ」
「でも、優也君その割には私の部屋にも来てくれませんでしたよね?」
「あー美姫の家は大きすぎて気軽に行きにくいっていうか……というかそもそも好きな女の子の家にホイホイと行けるほどの度胸備わってないよ」
「慣れてください。これは彼女命令です」
美姫は俺にそう優しく言ってきた。言っている内容は結構めちゃくちゃだけどな。しかし、折角美姫と付き合うことができたわけだし彼女の部屋に久しぶりに行ってみたいかなとは思っている。
「もぅ、二人だけの世界に入り込まないでよね」
「あ、ごめんなさい天音ちゃん」
「大丈夫だけど。私もちゃんと混ぜてね」
「はい、勿論ですよ」
「おーおー……一切ぶれないんだね」
「勿論ですよ。そういえば天音ちゃんと優也君と遊んでみたいゲームがあったので持ってきたんですけど、やりませんか?」
「ゲーム?いいね、何てゲームなの?」
天音がそう言うと、美姫はポーチの中から細長い棒のお菓子の入っている棒を持ってきた。色々な味があるのだが、俺はチョコのやつが好きだったりする。それで、これでゲームをする?あれ、何か想像ついたぞ。
「えええ、美姫ちゃん!?あれやるの!?」
「はい、そうですね」
「でも、万が一キスしちゃったらどうしよう?」
「天音ちゃん。むしろそれが目的です!」
「いや、それゲーム性崩壊しちゃってない!?」
お菓子でゲーム?と言われるかもしれないが、実はこれ結構有名なゲームだ。この一本の
お菓子を両方からそれぞれが咥えて、徐々に食べ進め先に離した方が負けというゲームだ。どちらも離さなかった場合はそのまま唇がくっつきチューするということだ。教室のリア充たちがこのゲームをしていたところは見たことはあるが、まさか俺がこれをやっる羽目になるとは。とは言え、まぁ最悪ギリギリで離せばいいか。
「それじゃあ、まずは私からでいい?」
「構いませんよ」
「それじゃあ優君、そっち咥えて」
「分かった」
天音に渡されたお菓子の端を口に咥えた。そして天音は反対側の端を口にくわえた。
「それじゃあ目を逸らしてはいけませんからね。あ、あと負けた方は勝った方の言うことを一つ聞くということでいきましょう」
――ちょっと待って!?俺。そんなの聞いてないんだけど。
天音はゆっくりと俺のことを見ながらお菓子を食べ徐々に俺との距離を詰めてきた。俺もルールに従って少しずつ食べ進める。
というか、これ俺はどうすればいいんだろうか。天音は恐らくお菓子を離すことはしないだろう。結局そんなことを考えているうちに気づけばお互いにお菓子を口から離すつもりはないみたいだ。そして、ついにその時がやってきた。
天音はそのまま食べ進め、やがて俺の唇に柔らかい感触があった。どちらも離さなかった結果、俺と天音はキスをしていた。少しの間キスを続けた後、天音が顔を離した。
「は、恥ずかしいよ~」
「ふふふ、でも楽しかったんじゃないですか天音ちゃん」
「うん。優君とキス出来て幸せだったけど……恥ずかしいよぉ」
「よしよし」
天音は美姫に抱きしめてもらい、彼女の腕の中で恥ずかしそうにうずくまっていた。




