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#168:同居許可

「それにしても随分と久しぶりな気がします」

「いや、今年初めて来たときに比べたら期間は短いと思うけど」


 改めて俺の部屋を見渡しながらそう言う梨沙に対して、俺は呆れながら言った。


「いえ、折角お兄さんの家に遊びに来たのに、中々お兄さんの部屋を堪能できてないんです。これは今日たっぷり堪能するしかありません」

「梨沙ちゃん少し落ち着きなよ」

「というか梨沙ちゃんって、お兄様に会えないときはどうしてたの?というか、夏休みが終わればまた会えなくなるだろうし」


 香音が疑問に思ったことを言った。すると、梨沙はきょとんとした表情を浮かべた。


「それは我慢ですよ?お兄さんに会えない日が長ければ長いほど、会えた時の楽しみがあるんです。それに、もう来年以降は我慢しなくても済みますからね」

「え?」

「ふふっ。だって、お兄様との同居の許可を貰ったんですから」


 梨沙がそう言うと、この場にいる全員が驚いたような声を上げた。


「え?なんで驚いているんですか?私の両親と、お兄さんの両親には許可いただいてるので何も問題ありません。お兄さんと同じ高校に入れるように勉強もしていますし、問題はないでしょう」

「俺、それ初耳なんだけど」


 梨沙が、来年から家に住むなんて話は今初めて聞いた。母さんと父さんめ。ワザと黙ってやがったな。


「むぅ、先輩!ずるいです」

「そ、そうだよ!」


 茜と天音が俺に抗議するように言ってきた。いや、俺に言われてもだな。そもそも知らなかったことだからな。というか、茜はともかくとして天音は家となりだから、毎日のように泊まろうとしなくてもいい気がするんだけどな。


「梨沙ちゃんが一緒に住むなら、私も一緒に優君の家に住むもん!」

「それだと天音のお母さんが寂しがるんじゃないのか?」

「うーん。どうだろう?優君の家に遊びに行ってるって言ったら、来るんじゃないかな?優君とイチャイチャしてるところお母さんにはあんまり見られたくないし、何より……」

「……何より?」


 天音がやけに間を貯めるので、彼女が続けて何を言うのかがとても気になってしまう。


「私のお母さん、優君の事狙ってる気がするんだもん!」

「えー?そうかな?天音の幼馴染を見るような、近所のお姉さんみたいに優しく見守っててくれるような視線だけどな?」


 外で偶然出くわした時も、世間話はするけど最終的には天音をよろしくね?とか、偶に上手くいってるかどうかを聞いて来たりする程度だ。


「うぅ~近所のお姉さん的な視線だったら信用できないよ~」

「明日香さんの影響ですかね……これは。とはいえ、流石に私もそれはないと思いますけど」


 俺が近所のお姉さんの様にと言ったのがまずかったのだろうか。天音の中で、近所のお姉さんに多分姉さんが含まれていて、そんな彼女と現在進行形で付き合っている。だから天音のお母さんもそんな感じになったら複雑だと考えているのかもしれない。天音は、偶に天音のお母さんに対する劣等感を見せることがある。


「ま、まぁその件については私もそれとなく探りを入れてみますね」

「美姫ちゃんの探りは信用できないよ~。いつ優君の彼女に入れようとするかわかったもんじゃないからね」


 天音がプリプリと怒りながら、美姫にそう言った。




「やばい、やばい。私だけ出遅れてるよ。どうしたらいいかな千春ちゃん?」

「え?ど、どうしたの香音ちゃん」


 香音ちゃんが焦ったように私に話しかけてきました。


「わ、私もお父様に頼んで、お兄様とお姉様と同じ学校に……うぅ、恥ずかしいよぉ」

「あーそういうことね」


 私は香音ちゃんが一人、悩んでいた訳を知って納得しました。


「どうしたらいいかな?千春ちゃん」

「うーん。とりあえず寂しいから、私と梨沙ちゃんと同じ学校に行きたいってことにすれば?お兄ちゃんの名前を出すのは恥ずかしいんでしょ?」

「う、うん。いいの?」


 お兄ちゃんたちが盛り上がっている中、私は香音ちゃんのまだまだ叶いそうもない恋をこっそりと応援していました。


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