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#167:お兄さんグッズ

「お兄ちゃん、お兄ちゃん」

「うん?どうかした千春?」

「今日は私と二人な時間なわけだし、折角だから家に戻らない?」

「え?別にいいけど」


 千春に手を引かれて、美姫の家を出た俺たちは家の前に立っていた。


「何か自分の家だけど、久しぶりだな」

「そうだね。例年は私たちの家をローテーションしながら過ごすところを移してるけど、今年はお客さんが多いから、家とか天音お姉ちゃんの家だと流石に少し厳しいからね」


 美姫が遠慮しないでいいと言ってくれてはいるんだけど、茜や梨沙たちを置いた状態で、俺たちがいなくなるのも申し訳ないから美姫の家にお邪魔させて貰っている状態なわけだ。ただ、今日は千春と一緒に過ごす予定だったので、偶にはということでこうして家に戻ってきたわけだ。まぁ、隣だから戻ろうと思えばいつでも戻れるんだけど。




 家に帰ってきて、まず俺たちは俺の部屋に向かった。千春に自分の部屋に行かなくていいのかと聞いたんだけど、どうやら特に用はないらしい。むしろ、狙いは俺の部屋で俺と二人っきりになることだったらしい。そんな千春の企みは、はかなく散ることとなる。


「お兄さん!」

「おわっ!?梨沙?」

「梨沙ちゃん!?」


 俺の部屋のドアが開いたと思ったら、次の瞬間梨沙が走ってきて俺に抱き着いてきた。そんな梨沙を見て、千春が驚いていた。


「ちょっと待って?今日は私が皆にお願いする日だったじゃん」

「うん。でも家でいつものように過ごしたいって言ってたけど、いつものように立ったら私とか天音お姉さんとか遊びに来るからね」

「ちょっと。梨沙ちゃん待ってよー」


 遅れるようにして、息を切らせながら天音がやってきた。遅れるようにして、美姫と茜

それから香音が部屋に入ってきた。


「梨沙ちゃんも天音ちゃんも待ってください。千春ちゃんごめんなさい。二人きりにしようと思ってたんですけど、梨沙ちゃんが駆け出しちゃって」

「大丈夫ですよ。こんなことだろうと思ってましたから。梨沙ちゃんには後で罰与えとくから気にしないでください」


 千春がそう言うと、梨沙が顔を青ざめた。


「ち、千春ちゃん。それだけは~」

「だーめ。私の二人っきりの時間を邪魔したんだから、これくらい覚悟してよね?」


 千春がやけに怖い表情で、梨沙のことを見た。


「いやーお兄さんグッズは……お兄さんグッズだけは下さい」

「ちょっと待って。何それ?」

「え?お兄さんのぬいぐるみとか。お兄さんの写真とか一杯ありますよ?」

「知らないんだけど、俺」


 俺は梨沙のことをジト目で見つめた。


「いやー。梨沙ちゃんに言うこと聞いてもらう時ってこれが最高率なんだよね。ぬいぐるみ作ったりとか、小物作ったりするの得意だから。前に試しに作ったら、梨沙ちゃんが滅茶苦茶気に入ってくれてね。だから、梨沙ちゃんがお願い事をいくつか聞いてくれたら、一つずつ上げることにしてるんだ」

「そのお願い事っていうのは?」


 少し気になったので、千春に聞いてみた。


「うん?ああ、簡単なことだよ。例えば、お兄ちゃんと二人っきりになりたい人がいるときに、その日はお兄ちゃんのこと我慢してっていう時にお願い使ってるかな。……まぁ基本的にお兄ちゃんのことだから、お金とかとったりしてないからそこは安心してね」

「お兄さんのグッズ作るのやめるのは、やめてください。死活問題何です」


 梨沙は必死の形相で、千春に頼み込んでいた。


「仕方ないなぁ。今日の分はギリギリカウントにしてあげるよ。十ポイントたまったから、はい。クッキーを食べてるお兄ちゃんのぬいぐるみ」


 千春はそう言うと、ポーチの中からぬいぐるみを取り出して梨沙に渡していた。梨沙は、それを受け取ると大事そうに持っていた。


 俺のことで彼女である梨沙が喜んでいるのは嬉しい反面、今の俺の気分はかなり複雑だ。


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