#145:梨沙とのキス
それからは運がよかったのか、何とか真っすぐ進んだ報告に美姫がいた。
「あー優也君いた!どこ行ってたんですか?」
「ごめん美姫ちゃん」
「あれ……その子たちは?」
美姫は俺の後ろにいる二人の少女を見て、首をかしげながら言った。
「香音ちゃんと梨沙ちゃん迷子になっちゃってたの?」
「う、うん」
「そっかそっか。もうすぐで屋敷だからついてきて」
美姫に連れられて、俺たちは屋敷へと向かった。
「あ、着いたよ!」
「本当だ。ありがとうございます、美姫ちゃん。あ、えっと……貴方は」
「俺は月田 優也。よろしくね」
「私は西条 梨沙。よろしく」
「東条 香音です……よろしくお願いします」
二人と握手を交わした。結局その年は、その後は美姫が主役として、その隣に俺がいたこともあって結局二人と話すことが出来ずに、そのまま終わった。
「えへへ~あの時から、私お兄さんのことが好きなんですよ?」
「そ、そうなのか?」
「はい。あの時のお兄さん……ヒーローみたいに格好良かったですよ?」
梨沙はニッコリと微笑みながら言った。何かこうやってじっと見られていると、気恥ずかしいものがある。
「あれ?お兄さん照れてませんかー?」
「い、いや照れてないけど」
梨沙はニマニマとしながら俺のことを見てきた。
「あ、お兄さんこっちに来てください」
「うん?」
梨沙はベッドに座ると、隣に座る様に促した。俺は彼女が叩いた場所に近づいて、そこに座った。
「ふふふ、引っかかりましたね?」
梨沙はそう言うと、俺をベットに寝かせた。そして、彼女は俺にまたがるようにして座った。そして、体を前に倒すと、俺の顔を目の前に近づけた。
「お兄さん。大好きです。今からお兄さんの唇奪っちゃいますね?」
「え?」
呆けている俺に、梨沙は俺にキスをした。
「いつまでも待ってる時間はないんで、お兄さんのことメロメロにしますね?」
「お、お手柔らかにお願いします」
「それじゃあ、お兄さんからもキスしてください?」
梨沙は俺にねだる様に言った。うーん、梨沙といると正直ドキドキさせられる。けど、まだ妹っていう感じが強い。
初めて梨沙や香音と会った翌年からは、彼女たち共より仲良くなり、二人と遊ぶことが多くなった。二人よりも俺と美姫の方が年上だということもあってか、面倒を見ることも多くなった。確かこの時に、香音と天音が初めて会ったんじゃなかったかな?そういえば、その時から梨沙は俺にべったりだった気がする。当時は可愛らしい妹のような存在だと思っていたけど、当時から好意を抱いてくれていたらしい。
「……お兄さんはまだ私のこと女の子として見てくれないんですか?」
梨沙は目をウルウルさせて俺のことを見てきた。うっ、そんなに可愛らしく見つめられると断りづらいなぁ。
「わ、分かった」
俺は彼女に顔を近づけると、そのままそっとキスをした。梨沙からねだってきたはずなんだけど、彼女は滅茶苦茶驚いたような表情を浮かべていた。
「あ、お兄さん。ありがとうございます」
「う、うん」
キスが終わると、梨沙は凄く嬉しそうな表情を浮かべた。
「私も早くお兄さんの彼女になりたいです」
「そ、そうか」
梨沙は笑顔で微笑んだ。今年の夏の間には、返事を返してあげないとだなぁ。とはいえ、キスまでしちゃった以上、俺の心はもうほとんど決まっている。後は、いい感じの雰囲気の時に告白したいなぁって。何か梨沙に流されて、首を縦に振るのはなんか違う気がする。
自分の口から、雰囲気に流されず彼女には気持ちを伝えたい。それが複数の彼女がすでにいるのに、長年ずっと想い続けてくれた梨沙へ、俺ができる最低限のラインだと思っている。




