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#130:千春のアドバイス

前回の続きです。


「うん、そうだね。天音お姉ちゃんの態度をそのままでいいから、お兄ちゃんと天音お姉ちゃんの仲を引き裂くような発言をしないところから始めてみたらどうかな?」

「でも、それじゃあお兄様は私のこと見てくれないんじゃ?」

「うーん、大丈夫だと思うよ。香音ちゃん存在感強いから」

「千春ちゃん、それはどういう意味なのかな?」


 香音ちゃんの圧がすごい。でも、天音お姉ちゃんの不断な態度からしてかなり存在感凄いと思うけどな。


「少なくとも全く見てもらえないってことは大丈夫だから安心して」

「う、うん。それなら、良かったのかな?」

「何の話をしてるんだ?」


 私と香音ちゃんが二人で話をしていると、突然お兄ちゃんが私たちに話しかけてきた。私も少しビックリしたけど、香音ちゃんは肩をピクッとさせているあたり、よほど驚いているんじゃないかな。香音ちゃんはお兄ちゃんに対して背を向けるように座って、私と話をしていたから驚くのも無理はなさそう。


「ななな、お兄様。まさか聞いてましたか?」

「いや、全然?何か楽しそうに話してるなぁと思って」

「駄目です。乙女の秘密の話を聞かないでください」

「あ、それは悪かった」


 お兄ちゃんはそう言うと、天音お姉ちゃんたちの方へと戻って行ってしまった。それにしても香音ちゃん、すごく恥ずかしそうにしてたけどなぁ。


「うぅ、恥ずかしいよぉ」

「あーうん。よしよし」

「……あっ」


 恥ずかしさから私の胸元に顔を埋めた彼女に対して、私は優しく頭をなでた。


「徐々に慣れていくしかないと思うよ。一気に距離を詰めようとするのは難しいと思うから」

「千春ちゃんはどうやってお兄様に告白したの?」

「私の場合は結構大胆に昔から気持ちを告げてたからあんまり参考にならないと思うよ」


 実際私の場合は、自分の気持ちの自覚よりも、兄妹という壁をお兄ちゃんに取っ払ってもらう方が何十倍も大変だったわけだからね。


「分かった。今度茜お姉ちゃんに聞いてみるよ」

「本当に!?」

「うん。美姫お姉ちゃんに聞いた話だと、茜お姉ちゃんも中々素直に気持ち伝えられなかったらしいから。多分適任だと思うよ」

「な、なるほど」

「……まぁ、美姫お姉ちゃんとか天音お姉ちゃんはあまりにも参考にならなさそうだからね」

「まぁ、それは見てたら何となくわかるけど」

 結構外でも手をつないだりとかしてたからね。お兄ちゃんじゃなければ流石に気づくと思うんだけどなぁ。


「そういえば千春ちゃんはパーティには出ないの?」

「あのパーティ誰でも出れるってわけじゃないでしょ?だから私は裏方として見守っておくから」

「本当に!?ありがとう、千春ちゃん」


 まったくこの娘は。近くで見守っててほしいって素直に言えるようになれれば、お兄ちゃんにももうちょっと素直に接することが出来そうだけど、まだまだっぽいなぁ。


「千春ちゃん、香音ちゃん、そろそろ寝る時間だけど?もう大丈夫かな!?」

「嘘!?もうこんな時間!?」

「確かに、結構話してたからなぁ……私たちは大丈夫です、明日香お姉ちゃん」

「オッケー。じゃあ電気消すね」


 私が電気を消していいと伝えると、明日香お姉ちゃんは部屋の電気を消した。私たちはそのまま布団の中に入った。


「天音お姉様!」

「きゃっ!?香音ちゃん!?」

「さっきはお兄様に譲ってましたけど、今は私がお姉様に甘える番です!」

「いや、別に俺は甘えてたわけじゃないけどな」

「もぅ、香音ちゃん落ちついて」


 布団に入ると、先ほどまでのことは忘れたかのように、再び天音お姉ちゃんにだきついていた。まぁ焦ることでもないし、香音ちゃんの自由にさせておくのが一番かな。


 そんなことを考えながら、私は眠りについた。

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