#129:親友の秘められた想い
千春ちゃん目線で書いたの初めてですかね?
「ゆーう君」
「うわっ、びっくりした」
「えへへ……隣で寝よ」
布団を敷き終わった後、風呂から上がってきた他のメンバーも合流をした。今すぐに寝るわけではないんだけど、どこで寝るかを決めようということになった。そして早速天音は腕を絡ませると、恥ずかしそうにしながらそう言ってきた。
「それじゃあ、お姉様の隣は私です!」
「じゃあ香音ちゃんの隣は私が貰おうかな?」
「うん、いいね。千春ちゃんと話したいことも一杯あったから」
「優也君の隣は……」
「先輩の隣で寝たいです」
「えっと、明日香さん構いませんか?」
「うん、構わないよ。私はいつでも優君の部屋に押しかけることが出来るからね」
そんなこんなで、千春、香音、天音、俺、茜が横一列に並んで寝ることになった。当初は全員同じ部屋で寝ようとしていたんだけど、さすがに狭いということもあって美姫と姉さんは、俺の部屋で眠ることにしたらしい。
別に家には美姫の部屋も姉さんの部屋も何故かあるし、そこで眠ればいいんじゃないかと言ったんだけど、俺と眠れない代わりということで説得されて、渋々納得した。まぁ美姫と姉さんだったら俺がいなくてもとくに何かされることはないだろう?……ないよね?
「先輩、先輩。ぎゅー」
「あ、茜!?」
彼女は甘えるような声でそう言いながら抱きついてきた。ぎゅーって普通は口に出さないと思うんだけど、仮彼女になってからの彼女は基本的に素直で滅茶苦茶可愛らしい。すると、反対側から突然天音に抱きつかれた。
「むぅ、お姉様がお兄様に夢中です」
「まぁまぁ。たまには天音お姉ちゃんの好きにさせてあげたら?」
「まぁ、確かにあの表情を見せられたら仕方ないか……」
私は少し拗ねている香音ちゃんに言った。香音ちゃんも普段の言動が少し過激なことは分かっているようで、今は天音お姉ちゃんに抱きついたりはしないみたい。
「それに千春ちゃんと話したいこともあったからね」
「私に話?」
そう言えば、さっき言ってたかもしれない。
「チャットで聞いて驚いたけど、千春ちゃんお兄様と付き合ってるんだってね?」
「うん、そうだけど?」
「そっかそっか。千春ちゃんの気持ちは前から聞いてたけど、兄妹の壁を越えられて凄いなぁって」
「ふふん、そうでしょう」
「何でお兄様のことを好きになったの?」
香音ちゃんは私にそう聞いてきました。お兄ちゃんのことを好きになって告白するときに相談もしたし、何よりお兄ちゃんの良いところなんて自分が知ってるはずなのに。そんなことを考えると吹き出してしまった。
「え?どうかした?」
「いた、別に。私が好きになった理由は香音ちゃんと同じだよ?」
「私と同じ?……どういうこと?私は別にお兄様のことは何とも」
「全く。何とも思ってない異性と同じ部屋に泊まろうとする?それにずっとお兄様って呼んでるんだもん。尊敬とか情愛の眼差しで籠ってるの気づいていないと思った?」
私は少しからかうように香音ちゃんに言った。すると香音ちゃんは突然顔を真っ赤にした。
「うぅ、知ってたの?」
「何となくだけどね」
「お姉様のことは好きで抱きついたりできるけど、お兄様には恥ずかしくなって、お姉様を取ろうとすることで構ってもらうことくらいしかできないよぉ」
「まぁそれだと両方の目的を達成できるから、執拗に天音お姉ちゃんに抱きついていたんだ」
「うぅ、でも千春ちゃんにお兄様が好きってことがバレてたなら……お兄様にも」
「あ、それはないから安心して」
不安そうに言う香音ちゃんに、私はズバッとそう言い切った。お兄ちゃんは鈍感だから絶対に気づいていない
「でもお姉様のことも同じぐらい好きだから……」
「そうなると茜お姉ちゃんの時とはまた違うんだね。……だとするともう少しお兄ちゃんに対する態度を和らげてみたら?」
「和らげる?」
私は彼女に一つ提案してみることにした。




