#128:夕飯
結構考えてのサブタイトル。全然いいの思いつかなかった……
「皆さん出来ましたよ?」
しばらくして、美姫が俺の部屋の扉を開けてそう言った。
「本当に!?優君早く行こうよ!」
「お、おう」
「あ、待ってくださいお姉様」
「私たちも手伝ったほうがよかったんじゃないですか?美姫先輩」
茜が困ったように言った。
「気にしないでください。こういったのは得意不得意がありますから」
「というか美姫と千春が出来過ぎるんじゃないか?」
「ふふふ、私はともかく千春ちゃんは凄いと思います。あの年で、簡単に作ってしまうんですから」
「美姫ちゃんも充分すごいと思うよ!私なんて全然だし」
天音は少し落ち込んだ様子で嘆いていた。
「天音ちゃんはこれから頑張っていけばいいんですよ。優君のために頑張るんですよね?」
「も、勿論だよ」
「お姉様ならきっと出来ます!お兄様のためっていうのが癪ですけど、応援します」
「う、うん。頑張ってみる」
改めて美姫と千春の凄さを目の当たりにしている天音は小さく意気込むのだった。
「うわぁ、美味しそう」
リビングに入って料理の並べられたテーブルを見ると、香音は目を輝かせながら言った。
「ふふふ、どうだい?私も実は作るの手伝ってたんだよ?」
そんな彼女に後ろから、近づく人影があった。
「あ!明日香お姉様。お久しぶりです」
姉さんだ。彼女は用事で来るのが遅れると言っていたけど、少し早く終わったみたいで美姫たちの料理を手伝ってくれたらしい。
「うん、久しぶりだね。元気にしてたかい?」
「はい、勿論お姉様のことを考え、想って元気に生きていました」
「そっかそっか。変わらないね……さて、冷めるといけないし、ご飯を食べることにしようか」
「はーい、優君。あーん」
隣に座っていた天音が、おかずを取って俺の口元まで運んできた。俺がそれを口に含むと、夢中で食べていた香音と目が合った。
「あー!ずるいです!」
香音は駄々をこねるようにそう言った。
「まぁまぁ落ち着いてください香音ちゃん」
「これが落ち着けますか!大罪ですよ?」
「まぁそれには同意です。天音ちゃん……抜け駆けは許しませんよ?」
美姫は微笑みながらそう言うと、天音の真似をするかのようにおかずを取って俺の口元まで運んできた。
「それなら、私も。お姉様」
「え?え?わ、分かったよぉ」
俺は美姫に、天音は香音にそれぞれあーんさせられた。それを目の当たりにした、千春と姉さんと茜の三人が許すはずもなく、結局かわるがわる食べさせられて、俺はこの後、夕食の箸を持たせてもらえなかった。
夕食を食べ終えた後、お風呂に入ることになった。まず一番最初に俺が一人で入ったと後、皆は二人ずつで入ることになった。
「はぁ、疲れたよぉ」
「ど、どうした?」
天音はそう言うと、ぐったりした様子で俺の部屋に入ってきた。
「そうですか?私は楽しかったですけど?」
「香音ちゃんだけだよ、楽しかったの」
「ああ、そういうことか」
「はい!お姉様と一緒にお風呂に入れたんで滅茶苦茶楽しかったです。二人きりで入る機会を与えてくれたお兄様には感謝しておきますね」
「お、おう?」
別に俺が何かしたわけではないんだけどね。お風呂の大きさと時間効率を考えた上でこうなったわけだし。
「優君、皆がお風呂から戻ってくる前にお布団敷いちゃおっか?」
「そうだな」
「あ、お姉様との共同作業ですね!?私も手伝います」
三人で俺たちは空き部屋に布団を敷き始めた。香音が寝る部屋を案内した上で、布団が彼女以外の人数分敷かれていることで、俺と天音が同じ部屋で寝ようとしていることに気づいた香音が騒ぎ出すことになった。
「お兄様?みんな別の部屋かと思ってたから、部屋の提案受け入れたんですけどこれはどういうことですか?」
「え?あー。美姫が一緒に寝るって言ってたからな」
「まず、お兄様とお姉様が一緒に寝たら間違いが起こる可能性があります!後、お姉様の部屋に私が忍び込めません」
「いや、後半は理由としてダメだろ」
俺は呆れながら香音に言った。




