#123:渡会の母親
少し前進……したのか?
瑠璃ちゃんとの関係は大きく動いたりはしません。
「ねぇねぇ、今日は二人ともどんなことしたの?」
「天音ちゃん。それを聞くのは流石に……」
「構わないわよ。えっと、そうね……」
天音の質問を美姫は止めようとしたのだが、渡会は結構乗り気で離し始めてしまった。結局今日の内容を洗いざらい離されて、かなり恥ずかしかった。
「ふぅ、ようやく着いたか」
「私は結構楽しめたわ」
「さてと荷物を降ろさなきゃですね」
「はいはい!私も手伝う。行こっ、優君」
「おう」
俺は天音に引き連れられるようにして、一旦車から降りた。
「うわぁ、瑠璃ちゃんの家結構大きいね」
「確かに私の家ほどではないですけど、広いのは間違いありませんね」
「両親が一応それなりに稼いでいるらしいから。……最も人柄は好きじゃないのだけれど」
そんな会話をしている間に俺は渡会の荷物を取った。
「よっと。持てるか?」
「ええ、大丈夫よ。美姫さんもここまでありがとう」
「いえ、気にしないでください」
「それじゃあ……」
渡会が何かを言いかけると、彼女に一人の女性が近づいた。
「あら、まぁ立派なお車ですこと」
そう言うと、視線は俺へと向いた。そして俺のことを見定めるような視線で見てきた。
「母様。何をしているのかしら?」
「あら、瑠璃。ふふふ、なるほどそういうことね。今日貴方がやけに浮かれてる様子だったから、気になっていたけれど……なるほどねぇ。こんな立派な車で送り迎えしてくれる、しかも顔も整っている。そんな子がいたわけね」
「いや、それは美姫さんの家の物だけれど」
すると今度は、美姫の方へと視線を向けて見定めるような表情を浮かべた。
「あら、これは失礼したわね。貴方も、まだ幼いけれど随分美しいじゃない。瑠璃、いい友達を持ったじゃない」
「ま、まぁ……それはそうなのだけれど」
何か引っかかる。まるで遠回しに友達は選べと言っているような、そんな感じがする。
「なるほどねぇ。これほどまでの子がいるとは思っていなかったわ。だから彼女のもとで働きたいと言っていたのね」
「ま、まぁそれだけではないのだけれど」
「それについては私は何も言わないわ。ただ、人生は一度きりだもの。よく考えなさい。それじゃあ私は先に家に戻るわね」
そう言うと渡会のお母さんは家の中へと入って行ってしまった。
「いいお母さんだったね。瑠璃ちゃんの心配しててくれたよ」
「う、うーん?」
「そうかしら?今もこの車見て美姫さんの家が豪華だって知ったから、とりあえず候補には考えておくみたいな感じだと思うわ」
渡会が少しため息をつきながら言った。美姫も同じことを感じていたらしい。
「ま、まぁとりあえず将来のことはある程度認められたからいいんじゃないか?」
「ゼロよりはマシってだけね。お金だけで医者とか弁護士とかを目指せっていう人なのだから……少し困るわね」
「お金よりも幸せなこと何て一杯あるのに」
俺たちの話を聞いて、納得のいかないと言わんばかりにムッとした表情を浮かべている天音がそう言った。
「凄い変わりようだな」
「だ、だって。本当に瑠璃ちゃんを心配しているようにしか見えなかったんだもん」
「まぁ俺も確信は持ててなかったけどね」
「それにあの母さんあって父さんだし、どちらも厄介なのよ。ああ、気が滅入るわ」
「大変そうですね」
「そうね。美姫さんたちが羨ましいわ」
渡会は苦笑しながらそう言った。
「さてと、あまり長話していてもあれだから、もう行くわね」
「おう、それじゃあまたな」
「ええ。月田君、今日は楽しかったわ。……その、またお願いできるかしら?」
「ああ、勿論」
「そう。そう言ってくれてうれしいわ」
渡会は嬉しそうに微笑むと、家の中へと入っていった。




