#99:ご褒美の翌日
「う、うーん」
「おはようございます、優也君。昨晩はよく眠れましたか?」
朝重いまぶたを無理やり開けると、俺の顔を覗き込むようにしている美姫の姿があった。
「まぁ、よく眠れたよ」
「それなら良かったです。朝のキス……お願いしてもいいですか?」
美姫は少し恥じらいながらそう言った。寝起き、意識がいまだぼんやりとしていたのだが、今の一言で眠気が完全に吹っ飛んだ。俺は手を彼女の腰に回ると、彼女は期待するように目をつむった。そして、俺は顔を近づけて彼女の唇にキスをした。
あ、あれ?顔を離そうとしているのだが、いつのまにか美姫が俺の背中に腕を回しており、顔を離そうにも離せない。無理やり離そうとすれば、できるのかもしれないけど恋人である彼女を無理やり突き放したみたいな感じになってしまいそうで俺にはできなかった。結局しばらくの間彼女とキスをし続けていたのだった。
「美姫。恥ずかしいから……」
「ふふふ、昨日のお返しですよ?昨日優也君から、キスしてくださった時は、すぐに終わってしまって……少しせつなかったんです」
美姫は少し拗ねた表情を見せた後、にこりと笑った。
「だから、今日はせつなくならないように、抱きついちゃいました」
「……美姫」
「優也君……もう一回キスしますか?」
美姫はニヤニヤしながら、俺に聞いてきた。
「いや、恥ずかしいから今日はやめとくよ」
「仕方ないですね。じゃあとりあえず今はあきらめておきます」
美姫は笑顔でそう言った。俺がこう言うのを分かってて聞いたんだろうな。落ち込んでいる様子が全くなかったし。
「さてと、優也君。名残惜しいですが、家に戻って教科書とか準備しなければいけませんよね?」
「ああ、そうだな」
「それならば手短に朝食を済ませてしまいましょう」
俺たちは美姫の部屋から出て、朝食をとった。そして、俺はいったん家に戻って学校の準備をした後、美姫と天音と姉さんと合流して、四人で登校した。
「おはよー瑠璃ちゃん!昨日は楽しかったね!」
「おはよう、天音さん。……ええ昨日は楽しかったわ。月田君もありがとね?」
「ああ」
俺がしてあげたことと言えば、膝枕をしてあげたくらいだ。けれども、それで喜んでくれているなら、恥ずかしさに耐えながらもしてあげて良かったと思える。
「ふふふ、昨日は滅茶苦茶恥ずかしがっていましたね。渡会さんも、優也君も」
「ええ……それは言わないで頂戴。いまだに思い出すと少し恥ずかしいのだから」
美姫は恥ずかしがっている渡会を見てくすっと笑った後、俺の方を見てきた。恐らく、二人っきりの時のことも入っているんだろうな。むしろそっちの方が恥ずかしかったし。
「あはは、でも瑠璃ちゃん可愛かったよー」
「天音さん。……お願いだからそれ以上言わないでほしいわ」
渡会が少し困ったような表情を浮かべながらそう言った。
「えー?本気でかわいかったのになぁ」
天音は少し落ち込む仕草を見せた。天音は渡会が恥ずかしがっているのを分かっていないのだろう。だから可愛いと言ったのにそれ以上言わないでと返されて少し落ち込んでしまったのだろう。そんな天音を見て、渡会が慌てた様子を見せた。
「どう収拾つけるんだよこれ?」
「ふふふ、まぁいいんじゃないですか?天音ちゃんが後は上手くやってくれますよ」
「全く。じゃあそういうことにしておいてやるよ」
俺は少し呆れたように美姫にそう言った。ちなみに、結局渡会と天音のバトルは天音に軍配が上がり、昨日の渡会の行動はかわいかったということになった……らしい。天音が「瑠璃ちゃんは可愛い子ー」と歌っていたので間違いないだろう……。多分。




