第5章 12 目覚めた場所は
次に目が覚めた時、私は自分のベッドの上にいた。
「・・?」
一体いつの間に私はイリヤ家に帰っていたのだろう・・・?ゆっくり起き上がると、一瞬グラリと激しいめまいが襲った。
「う・・・。」
暫くベッドの上で左手で額を抑えているとやがてめまいが治まって来た。今は・・何時なのだろう・・?
ベッドサイドの置時計を見ると、時刻は午後5時を指していた。確か私がレイフを探しに中庭へ行った時間は午後1時少し過ぎ。と言う事はあれから4時間近くも私は意識を失っていたことになる。
「一体・・・誰がここまで連れて来てくれたのかしら・・。」
その時、部屋のドアがカチャリと開かれ、メイドのリリーが銀の洗面器を持って現れた。そして私がベッドの上に起き上がっているのを見ると目を見張った。
「ア・・・アイリス様・・・。」
「リリー・・・。」
彼女の名前を呼ぶと、リリーは部屋の中央にある丸テーブルに洗面器を置くと私に向かって駆けよって来た。
「アイリス様!お目覚めになられたのですね?!良かった・・・。真っ青な顔で屋敷に戻られたときは・・本当に生きた心地がしませんでした!」
そして私のベッドに頭をうずめて身体を震わせる。
「リリー・・・。ごめんなさい、心配かけて・・・。」
私はそっとリリーの髪に触れながら言った。
「いいえ!そんなとんでもありませんっ!そ、それより大変失礼な事をして申し訳ございませんでした!ノックもせずに部屋へ入ってしまって・・・てっきりまだ目を覚まされていないのかとばかり思っておりましたので・・・。」
リリーはあたふたしながら言う。
「いいのよ、別にそんな事気にしなくても。」
笑みを浮かべながらリリーに言うと、彼女に質問した。
「ところでリリー。私をここまで連れて来てくれたのはどなたなの?」
「はい。オスカー王子でございます。」
「えっ!オスカー様がっ?!」
なんてことだろう。・・と言う事は私が教室を出ていく姿をオスカーは見ていたと言うのだろうか?
「実は・・・オスカー様は只今応接室におられます。どうしてもアイリス様が目を覚ますまでは帰らないと申されておりまして・・・。」
「えっ?!そ、そうだったのっ?!」
大変だ。一刻も早くオスカーの元へ行かなければ彼の逆鱗に触れてしまうかもしれない。慌ててベッドから降りて、部屋から出ようとするとリリーに呼び止められた。
「お待ち下さいっ!アイリス様っ!」
「え・・?何?リリー。」
「アイリス様・・・そのような姿でオスカー様の前に出られては・・・。」
リリーが頬を赤く染めている。
「え・・・?姿?」
そして私は気が付いた。自分がネグリジェ姿であると言う事に・・・。
それから約30分後―
リリーに手伝って貰い、濃紺の落ち着いたデザインのワンピースに着替えた私は1人で応接室へと向かった。コツコツと長い廊下を歩きながら窓を見ると、空はオレンジ色の夕暮れに染まっている。
やがて応接室の前に辿り着いた私は深呼吸をするとドアをノックした。
コンコン
すると中から声が聞こえる。
「・・・誰だ?」
「私です。アイリスです。」
「アイリスか?目が覚めたのだな?!中へ入って来い。」
オスカーに言われ、部屋のドアを開けた。
「失礼致します。」
頭を下げながらドアを閉め、顔を上げると部屋の中央のソファにはオスカーが一人で座っていた。
「アイリス・・・。」
オスカーはゆっくり立ち上がると、私の元へと駆け寄って来た。
そして次の瞬間―
私はオスカーの腕の中にいた。
「良かった・・・アイリス。目が覚めたのだな?」
耳元でオスカーが囁くように言う。
「はい、オスカー様。ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございませんでした。」
そして私はそっとオスカーの背中に手を回し・・・瞳を閉じた―。




