第2章 2 タバサ・オルフェンとの再会?
レイフが立ち去ると、私とオスカーだけがその場に取り残された。もうここには誰もいない。皆クラス編成の掲示板を見に行ったのだ。
「・・・。」
オスカーは腕組みをしながら私を見下ろしている。このままここに居ても埒が明かない。私は思い切って声を掛けてみた。
「あの・・オスカー様。掲示板・・・見に行かれないのですか・・?」
しかし、オスカーは質問には答えず、全く関係無い話を持ち出してきた。
「あいつとは・・・。」
突如オスカーが口を開いた。
「え?」
「あいつとお前はどういう関係なのだ?」
オスカーは私に強い視線を向けている。
「あの・・あいつとはレイフの事でしょうか?」
「他に誰がいると言うんだ?」
まるで当り前のことを聞くなと言わんばかりの口調でオスカーは言う。今迄の彼ならレイフと私の関係を言及してくる事など無かったのに・・。けれど質問には答えなくてはならない。
「私とレイフは子供の時からの幼馴染です。仲の良い友達ですよ。」
「友達・・・果たしてあいつはお前の事をそんな風に思っているのか?」
「どういう事・・・ですか?」
オスカーは少しの間、私を無言で見つめていたがやがて口を開いた。
「お前とレイフが2人揃って大聖堂へ入ってくる姿を見ていた。」
「えっ?!」
「お前達は式の間・・仲が良さげに話をしていたな・・・。」
そんな・・・オスカーはあの大観衆の中から・・・私達を見ていたというのだろうか?
「自覚はあるのか?」
ジロリとオスカーは私を睨み付けるように言った。
「自覚・・・ですか・・?」
「ああ、そうだ。幾らお前が俺の事を良く思っていないとしても・・・お前は俺の婚約者なんだ。周囲から誤解を受けるような・・今後俺以外の男と親しくするのは言語道断だ。分かったか?」
何処までも高圧的な物言いだが・・・何故だろう?私にはオスカーが嫉妬しているようにも見て取れる。だが・・そんな事を尋ねる訳にはいかない。
第一、いまはそれよりもオスカーが私とレイフの仲を疑っているのが気に入らない。以前の私だったら、すぐに反論しているだろう。だが70年の辛い経験が私を各段に大人にさせた。ここは大人しく謝っておこう。
「分かりました・・・。以後気を付けます。申し訳ございませんでした。」
オスカーは少しの間黙って私を見つめていたが、踵を返すと言った。
「では行くぞ。これから各クラスに別れてオリエンテーションが始まるからな。」
「はい。」
そしてオスカーと並んで再び歩き始めた時、背後でバタバタと駆け足が聞こえてきた。
「何だ?」
オスカーが振り返ったので私も振り返ると、驚きで目を見張ってしまった。なんとあのタバサ・オルフェンが駆け足でこちらへ向かって来るでは無いか。
そ、そんな・・・70年前はここで私とタバサは出会う事が無かったのに・・・。やはりオスカーと一緒に行動している事で、未来が少し変化したのだろうか?
「待って・・待って・・下さい・・。」
タバサは、ハアハア息を切らしながら私達に追いつくと言った。
「あの、あなた方は新入生の方ですよね?実は見ての通り私も新入生なのですが、聖歌隊で歌っていたので他の人達と出遅れてしまったんです。掲示板の張り出されている校舎の場所が分からないので、一緒に連れて行って貰えませんか?」
そしてじっと熱い視線でオスカーを見る。
「・・・。」
しかし、オスカーは返事をせずに何故か私の方をチラリと見た。まるで私に代わりに返事をしろと言っているようだった。
本当の事を言えば、今すぐこの場を逃げだしたい。私を罪に陥れ、流刑島へ流したこの2人に再び関わるなんて御免被る。だが・・・オスカーの信頼を得る為には・・。
「分かりました。ではご一緒に行きましょうか?初まして。私はアイリス・イリヤと申します。」
そしてタバサに笑みを浮かべた—。




