人間なんて簡単に死んでしまう
これは冴えないイラストレーターでテンプレ好きの転生の話。
「あぁーーじごどおわっだーー!!」
汚い声を出しているこの男の名は天野一輝天野一輝。年齢は36歳。この物語の主人公である。誠に残念ながら。
(今日ものど飴がうめぇ)
そんなことを内心でほざきながらおもむろにパソコンを開き「テンプレ 小説 異世界」と調べ始めた。
(今日はなんかいいのあるかなー)
この男仕事が終わったあとすぐにネット小説を調べ始めたのである。こんなぐうたらな男が主人公だと思うと気が重い。
(あ?なんだこれ?)
そういって見ているのは「テンプレ外した挙句魔王討伐しそこなったけどスローライフしようと思う」。いわゆる名前長い系ラノベである。人気なさそうだけど。
「はぁ?なんだこれテンプレ外しだとふざけんじゃねえ!テンプレこそ至高だろ!しかもなんだスローライフだと?スローライフは魔王討伐後か勇者パーティ追放後か、最強剣士か賢者の隠居後が絶対条件なんだよ!バーカ!出直してこいカス!」
わーお凄い悪口。そう思う程の言葉を早口で罵った。あと、そんな絶対条件はないから安心して欲しい。今のを見れば分かる通りこの男はテンプレ狂......失礼ちょっと頭のおかしいテンプレ好きなオタクなのだ。あと、オタクは敵に回したらいけないと思った。
「クソが!気分悪くなったわ」
そのままベッドにもぐりこむダメ人間さを発揮していく。ちなみにこの部屋窓もカーテンも閉まっていて、明かりもついていないのでパソコンの電気さえ落とせばベッドにもぐるだけですぐに寝れるのである。ちなみにこの男、二徹して仕事を終わらせているので睡魔は凄い。まぁそれでも仕事終わり一番にネット小説を開いているのだが。こんなことを言っている間にダメ人間は寝てしまった。寝返りをうち頭が枕から落ち、そのままベッドから転がり落ちて地面と衝突した。その後天野一輝はこちらの世界で起き上がることはなかった。
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(うぁ、眠)
"元”天野一輝は小さなベッドの上で目を覚ました。
(眩しいなぁ......ん?なんでだ?)
この男にとってはありえない現象だった。なぜならこの男、普段電気を付けないぐうたらひきこもり野郎だったからだ。まぁあくまで"だった”である。そして、この男と"この世界での親”との初対面だ。
(このイケメンとべっぴんさんはどこのどいつだ?......待てよ、目を覚まして知らない男と女がいるそして普段ならありえない状況、え?もしかしてもしかする?)
そうそのもしかしてだ。この男憧れの異世界転生である。
(きたーーーーー!!!!え?何これ夢?いや夢だったら覚めなきゃ問題ない)
夢なら覚めなきゃ問題ない、なんてかなりの暴論であるが無論夢では無い。
(ということは"あれ”もいるのか?"男の憧れ”はいるのか?テンプレ通りなのか?なぁ"あれ”はいるのか?なぁどうなんだ異世界!!!)
なんて喚いている(内心で)のでご登場頂こう。
(きたーーーーーー!!!!!)
棒線及びビックリマーク最高記録更新とともに出てきたのは"あれ”こと"メイド”である。しかし、
「#*¥☆&¥$@」
(は?なんのこっちゃ?)
主人公の前に言葉の壁が立ち塞がる。ですがこれでは不便なので天の声システム能力発動!!翻訳機能ON!!
「ご準備できました。」
これで私達は言語を理解出来ます。
「ほんと?じゃあマクス行きましょ!」
(だから何言うてんねん)
尚主人公には天の声システムは適用されません。